第14話 【伝える】
呉羽に何て伝えよう。宏太に誘われて遊園地に行くことは決まったけど、写真いるかって聞くのもどうなんだろう。
普通のガキだったら親に遊園地くらい連れていってもらってるだろう。
だけど、なんだろうな。呉羽と話してるとそういうの行ったことがなさそうな印象を受けるんだよな。なんか、知らないことが多すぎるっていうか。
だから写真送ったら喜びそうかと思ったんだけど、いきなりそんなの訊いて失礼にならないか。
「……うーん」
帰りの電車の中。俺はスマホの画面を睨み付けながらメールを送信しようか悩んでいた。
遊園地知ってる? なんて聞けないよな。知ってて当たり前だろ。いくら呉羽が物を知らなさすぎるからってこれはない。
病弱イメージは俺が勝手に思ってるものだし、実際はどうかも分からないんだし。ここは無難に、今度友達と遊園地行くから写真撮ってこようか、くらいでいいか。
『こんばんわ、呉羽。急なんだけどさ、今度の休みに遊園地に行くんだ。もしよかったら写真撮って送ろうか?』
メールの文を少し書き直して、送信した。
それにしても、本当に面倒だな。遊園地とかどれくらい振りだよ。ガキの頃ですらあんまり行った記憶ない。親に連れていってあげようかって言われたこともあったけど、人の多いところ嫌いだからいいって断った気がする。
そんな俺が、たった一人のガキのために何してんだか。
暫くして、スマホが小さく震えた。呉羽からの返事だ。俺は直ぐに確認した。
『ごめん、わからない。なんて読む?』
おおっと。これは予想外です。
まさか遊園地も知らないのか。本当にどういう生活してるんだ?
いくらなんでも世間知らずにも程があるだろう。まぁいいや。気にしてたらキリがない。
『ゆうえんち、だよ。色んなアトラクションがあって、まぁ大規模な公園みたいなものかな?』
『スゴイ。知らない。見てみたい』
『じゃあ写真撮って送るね。楽しみにしてて』
『うん! うれしい、ありがとう!』
そこまで喜ぶか。本当に謎だらけというか、変なガキだよな。てゆうか、こんなガキいるか?
まぁ他人の事情に深追いする気はないし、どうでもいいんだけど気にはなるよな。ここで変に追及しちゃってメール途絶えてもなんか後味悪いし。
『今回行くところは有名なテーマパークなんだ。きっと呉羽も気に入るんじゃないかな』
『楽しみ。遊園地って、どんなのがあるの?』
『人気なのは、ジェットコースターとか絶叫マシーンかな』
『絶叫? こわいの?』
『人によってはね。デカい乗り物が高いところから落ちたりとか……』
『え? 落ちるの?』
『そういう乗り物なんだよ。あとは観覧車とかかな。これはゆっくり動くよ』
『色々あるんだね。凄いなぁ』
アトラクションの説明って難しいな。なんか上手く表現できなかったけど、伝わってるのかな。
昔から国語とか苦手だったからな。語彙力とか全くないし、なんかちょっと悔しくなる。
『面白さが伝わるような写真、撮ってくるね』
『うん。どんな写真でも、うれしい。圭吾のくれるもの、全部うれしい』
『ありがとう。そう言ってもらえると、俺も嬉しいよ』
そういえば、宏太が結構高いデジカメ買ったって言ってたっけ。何か言われそうだけど、借りてみるか。
普段写真とか全く撮らない俺がデジカメ貸してとか言ったら、周りから噂されそうだ。
ま、それくらいは我慢してやるか。
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