幸せの仕合せ

第64話

「……んぅ」






ふいに目が覚めるとカーテンから覗く朝日の光が私の顔を照らしていた。


まだ意識がはっきりせず瞼だけが開かれている状態の私を布団の温もりが再び眠りの中へと誘おうとする。






そっと意識を手放そうとしたが、ふと温もりに物足りなさを感じた私は徐々に意識をはっきりさせると瞼を勢い良く開き布団から飛び起きた。






「が、くさん?……私、いつの間にか寝ちゃってたんだ」






刹那に昨日の記憶を呼び起こしながら部屋を見渡すと、ここは私の空想の世界なんかではなく現実だという事を理解し強い安堵感に包まれた。


ホッと息をついた時、ふと昨夜の雅久さんの温もりを思いだすとその体温が恋しくなり会いたい気持ちが沸き上がる。


私は本能のままに雅久さんを求め部屋を後にすると、記憶を辿りながら廊下を歩いてゆく。






「確か、真っ直ぐ行った所を右……だよね?」






静かな廊下にはパタパタとスリッパの音だけが響いていた。

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