第63話

小さく柔らかな女の体を逃さないように優しく包み込む。






静粛な部屋には女の小さな寝息だけが僅かに響いていた。






腕の中に収まるこのささやかな温もりを暫く堪能した後、抱き締めていた力を緩め起こさぬよう慎重に俺は女から体温を離した。






「椿は俺の『物』だよ。……おやすみ」






口元に緩い笑みを浮かべた俺は眠りについた女の頬を指で微かになぞると今一度教え込むように小さく呟き静かに部屋を後にした。

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