第62話

鼓動が激しく波打つのを必死で抑えながら瞳を閉じてしまった雅久さんの胸元を軽く揺する。






「はいはい、分かったから大人しくしな。今日は疲れたでしょ」






頭をあやすように一定のリズムで撫でなられる。






「よしよし、いい子は寝る時間だよ」






雅久さんの低い声も体から香る匂いも全てが甘く感じてしまう……。


吐息や密着している温かな体温を全身で感じていると徐々に眠気が私を襲う。






ふと今日の出来事が暗い水中をさ迷う私の創りだした幻想なのかもしれないと思うと不安で堪らなくなり眠りにつくのが怖いと思った。


けれど、私の耳に送り込まれる雅久さんの鼓動を感じた時不安や恐怖が一瞬にして取り除かれ、いつの間にか雅久さんの纏う暗闇へと引き寄せるられるように眠りについていた。

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