第58話

「優しいですよ。私いい子になれるように頑張ります!!」


「椿はいい子だよ。ずっとそのままでいて。……でも俺に食べられないように気をつけなよ」






食べるという単語に数時間前の事を思いだし心臓がピクっと跳ね上がる。






「が、雅久さん!!やっぱり急ぎましょう!?ここ、まだ真っ直ぐですか?!」


「次、左だよ」






頭上から笑い声が聞こえたが、私はなんとか内心の動揺に気づかないフリをし無理やり平常心を装った。






「はい、ここ俺の部屋ね。……入る?」


「え?いや、大丈夫です。……ここが雅久さんのお部屋ですね。覚えました!!」






早く皆のところに行ってお酒も飲みたいだろうし……。


そもそも部屋の場所を覚えればいいだけだもんね?






「なんだよ。入りたくないの?」


「いえ、そんなことないですよ!!場所は覚えたので十分かなと……」


「ふーん?……寂しかったらいつでも来ていいんだよ?」


「はい、ありがとうございます!!」






雅久さんの声や表情が私の心に付着しようとする。

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