第52話

「……うん。あったかいし、いい匂い」


「あ、あの、いろいろお借りしちゃいました……」


「うん、自由に使っていいよ」


「ごめんなさい……ありがとうございます」


「ん……」






首筋辺りに顔をスリスリされ、くすぐったくなった私は身を捩らせた。






「雅久さん……あの、そろそろ……」


「髪乾かしてあげる……。明日香、ドライヤー持ってきてくれ」


「だ、大丈夫ですよ!自然に乾きますから!……って、あれ?雅久さんも濡れてるじゃないですか!」






後ろを振り返ると少し湿りを帯びた髪に気付き、それを指摘すると雅久さんは目にかかっている少し長めの前髪を後ろにかき上げた。






「俺はすぐ乾くからいいの」






うわ……き、綺麗……。


あまりの綺麗さに思わずじっと雅久さんを見つめてしまう。


改めて暗闇ではなく照明の光に照らされるその顔はとても美しかった。


男性にしては色白で中性的に見えるが、その整った顔立ちから作られる表情はとても男らしさを感じさせる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る