第44話
「椿も俺の背中に腕回して。……ほら、もっと強く」
「は、はい!!」
ぎゅっと更に強く力を込めると、私を抱きしめている逞しい腕にも力が増したのを感じた。二人の体温が閉じ込められた事に私の頬は緩み出す。
降りやまない雨は二人を結び温もりを与えた。
私の悲しみ全てをこの冷たい雨に託してしまいたかった。
洗い流してはくれないだろうか、と。
雅久さんとの出会い、そこからが私の人生と呼べる物になればいいのにと願った。
お仲間さん達は自分を受け入れてくれるかな……?
そんな不安が私の腕に力を込めさせる。
すると私の体にも心地の良い圧迫感が増し、それが私の不安をも取り除いてくれた。時折、場所の指示をする雅久さんの声が胸から直接耳に伝わり安心感に包まれる。
瞳を閉じてうとうとしていると、
「椿、着いたよ」
「あ、はい」
雅久さんは私を抱え、鳥さんから降りた。
「ご苦労さん。ありがとな」
そう言うと、私の手首を引っ張り歩き始める。
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