第34話

「そうかそうか。椿お嬢さんがどうしてもって言うなら仕方ないね。じゃあ俺と椿だけの秘密の場所ね」


「いや、その……ど、どうしてもって言うか……」






素直な思いを口にした途端、顔が紅潮してくるのを感じた。


私達だけの秘密の場所と言われ歓喜で弾む心と共に自分の発言に恥ずかしさを覚え思わず口ごもる。






「あっそ。じゃあ教えちゃおう」


「え?……ち、違うんです!!えっと……私、雅久さんを求めすぎかなと思って、つい恥ずかしくて。ごめんなさい……二人がいいです……」






焦りやら恥ずかしさやらで早口に言葉を並べる。






「いいよ、もっと求めて」


「へ?」






不意に腕を引っ張られ体を抱き寄せられる。






「椿には俺しかいないからね。好きなだけ俺を欲しなよ。……もちろん俺もお嬢さんを求めさせてもらうけど」






優しく頬を撫でながら甘く低い声で私を惑わす言葉を放つ。


淡く火照ってゆく体を冷ましたくも抱き締めている腕がそれを許さない。私の中に収まりきらない様々な感情が沸き上がってゆくのを感じ目に涙が滲む。






「雅久さん……本当にいいんですか?」


「いいよ。椿の好きにしな」






雅久さんの指が頬から潤んだ瞳に移り目の縁を一、ニ度撫でられた私は堪らず落涙と合わせて雅久さんの胸に寄りすがる。

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