第33話

「……っ綺麗」


「天心街……ここは日が暮れても明るいままだよ」






空の果てまでありそうな程の高いビルが幾つも並んでおり、キラキラと煌めく街頭が沢山の人々を照らしていた。


闇と戦うこの街はきっと晦冥を知ることはないのだろうと思う。






見たこともない未来的な光景に驚嘆な眼を見開かせ、トクトクと鼓動が少し早まるのを感じた。


私は一体どんな世界に入り込んでしまったんだろう……。






「私が住んでいた世界とは全然違います。本当に現実なのかなって……すっごくビックリです!!キラキラしてて賑やかな街ですね」


「でも月を見るならさっきの場所が一番だよ」


「確かにそうですね!あんなに美しい月の光をここで見るのは勿体ない気がします。……あの、また二人で見に行ってくれますか?」


「二人で?」


「あっ、いや……大勢で見るのもいいですよね!!」


「あそこは俺のお気に入りの場所なんだよね。まだ誰にも教えてないんだ。……椿が俺とどうしても二人で見たいなら、誰にも教えないけど?」






雅久さんと契りを交わした特別な場所なのだと勝手に思っている私は、あの場所と雅久さんを独り占めしたいという邪まな考えが浮かんでしまった。






「……雅久さんが良かったら……ふ、二人で見たいです……」

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