第29話

服の上からでも分かるくらい、しっかりとした筋肉に私よりも固くて太いウエスト周りはとても男らしくて安心する。






ふと、彼を私の闇の中に引きずり込んでしまった……と、申し訳なさに襲われ思わず腕に力を込める。






ごめんなさい、雅久さん。


私はもう、貴方がいないと……。






「雅久さんっ……。ずっとずっと貴方のもので居させてください」






狡い私は痛む心を無視し彼を縛り付ける言葉を放った。






「ん、安心しな。椿は俺の『物』だよ……」






あの時あの場所で崖から飛び降り死ぬ筈だった私は、この時から流川雅久という暗い暗い海の中に深く沈み溺れていったのだと思うーー。

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