第25話

音って心臓のこと……?


そう理解した私は耳を澄ませる。ドクン、ドクンと規則正しく鳴る彼の心音が私の耳を擽った。


眠気に襲われそうな程とても心地のいい音だと思った。


ずっと聴いていたいと思い、目を閉じて彼の奏でる音に意識を集中させる。






「……はい。聴こえます」






そう答えるとそっと離された。名残惜しさを感じつつも雅久さんの瞳を見つめる。






「この音は椿にあげるよ。そして椿の音は俺の物。誰にも聴かしちゃダメだよ?他の奴のを聴くのも許さないから……それと、椿が死ぬ時は俺も一緒に逝ってあげる……どう?申し分ないでしょ?」






他の人が聞いたらとても驚く内容だと思う。でも、私の心は歓喜で満ち溢れていた。


必要とされている感覚が私の心を刺激し目頭が再び熱くなってくるが懸命にそれに耐え私は彼に感謝の思いを伝える。






「……っ。はい……。雅久さん、ありがとうござい、ます……っ」






雅久さんは楽しげな表情を浮かべると私の腰を抱き寄せた。

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