第24話

彼の瞳が少し見開かれたような気がしたけれど、それはたった一瞬ですぐに優しく微笑み返された。


お姫様抱っこのようにして抱き上げられ立ち上がると、地面にそっと下ろされた。






さっきはお互い座っていてよく分からなかったが、とても背が高いため見上げるような形で彼を見つめる。






「……ふっ、宜しくお嬢さん。……そうだ、名前聞いて無かったね?俺は、雅久。……流川雅久《るかわがく》だ」


「……雅久、さん」






大切に大切に呼んだ。


初めて心から誰かの名前を呼んだ気がする……。






「ん。お嬢さんの名前は?」


「百瀬椿《ももせつばき》です」


「……椿」





名前を呼ばれた直後に腕を引かれ雅久さんの胸元……心臓の辺りに耳を押し付けられた。






「……っ!?ど、どうしたんですか?」






急な展開にジタバタ慌てていると、






「聞こえる?俺の音」

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