生きる理由
第22話
「ーー俺が殺してやろうか?」
低く抑揚のない声で私の瞳を真っ直ぐに見つめる瞳の奥からは彼の心が見えなかった……。けれど、私はそんな初対面の彼に何故か甘えてしまった……。
「……っ。殺して、ください……」
一人ぼっちで死ぬより、この人に殺されたいと思った……。
二人の息づかいが私達だけの空間を作り上げており、お互い瞳を逸らさなかった。長かったのか短かかったのかはよく分からなかったけれど、私はただ彼の瞳をずっと見つめていた。
「……ふっ、冗談だよ」
読み取れない表情から一変した彼は、私に微笑みかけながら残酷な言葉を放った。
……冗談?
小さな光に蓋をされたような絶望感に襲われ目の前が再び真っ暗になり体に力が入らなくなった。
「……そう、ですか。……っ」
一人で死ねと突き放されたような気がして、再び目の前が滲むの感じ諦めるようにして俯いた。すると彼は両手で私の頬を柔らかく包み込み、私の赤く充血した瞳から流れる真新しい涙を拭き取った。
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