第20話

「泣くなと言いたいところだけど……お嬢さんそろそろ限界でしょ?涙拭いてあげるから下向かないで。……溜め込んでるもん全部出しちまいなよ」


「……っ」






赤子をあやすかのように私の髪を、細く綺麗な……でも男らしさを感じさせる指で優しく撫でられる。


つい甘えたくなってしまうような優しい瞳に私の心が徐々に溶かされてゆくのを感じた。






「好きなだけ泣いていいよ」






その言葉を聞いた瞬間私は全ての毒を吐き出した。






「……っ。うっ……ひっく……。ずっとずっと寂しかった、甘えたかった!!なのに、お父さんもお母さんも、わた、しの事……っ、愛してくれなかった。愛してくれないまま、死ん、じゃった……うぅ……っ」






私の心にひびが入るのを感じた……。


痛い、痛いと彼に向かって泣き叫び、自分でももう抑える事ができないでいた。






「ん。他には」






無表情のようで瞳に甘い優しさが滲んでいるからか無意識に暖かさを求めてしまい彼の首に両腕を巻き付けピタリと体を密着させた。


華奢に見えた体はがっしりと引き締まっていてとても逞しかった。






思わず胸元の固い筋肉に自らの顔を埋めてしまい彼の服を涙で濡らしてしまう。






「言ったそばから……。下向かないでよ。涙拭いてやれないでしょ?」






顔を上げると彼の指が優しく私の目元を撫で一つ一つ涙を溶かしてゆく。

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