第19話

誰が私を死なせてくれなかったの……?






「ふ~ん……死のうとでもしたのか?」






すると、今度は心底どうでもよさそうな顔をしていた。






「……はい。無い居場所から逃げだしたくて……早くそれから解放されたくて崖から飛び降りたんです。そのまま水中に飲み込まれた筈だったんですけど……何故かここで気を失っていて……ッ、死ねなかった……」






あの瞬間、やっと孤独から解放されたと思ったのに再び残酷を味わう事になるなんて思わなかった。


逃げても逃げたふりをしても追ってくる孤独から、どう抗えばいいの……?






最後の言葉は涙混じりに小さく絞り出された。






寂しげに震える自分の声が彼に届いたのかは分からなかった。


しかし……






「顔上げな、お嬢さん」






先程まで、どうでもよさそうにしていた彼が私のボロボロな心にまるで直接話しかけるかのように優しい声で私を呼ぶ。


その声に抑えが利かず更に涙が溢れでてくる。






「ほら、こっち向きなよ」






涙に濡れた顔を腰まで伸びた髪の毛で隠していたが、急かす声が先程より近くで聞こえたため、俯いていた顔を彼へ向けた。


すると彼の手が私の脇の下を掴んで持ち上げると、あぐらをかいている自身の上に私を横抱きにした。

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