第18話

胸元部分にあてていた耳をやっと離してくれた事にとホッとし、火照った顔を冷ますには丁度いい秋の風を受けていると……。






「ふっ……。でもお嬢さん今まさに死ぬんじゃないか?心臓……破裂しちまいそうな程すげーバクバク鳴ってたぞ?」


「……っ!!そ、それは、その……」


「ん?」






こ、この人まさか気づいててわざと……。


ニヤりと意地悪な笑みを浮かべながら今度は落ち着かせるかのように私の胸元を優しく撫でている。






「よしよし」






ふと、胸元をなんの躊躇いもなく撫で回されているのに気付き再び顔に熱が集まるのを感じたため、急いで男の人から距離を取った。






「あの……も、もう大丈夫です」


「ふっ、そうか。……それで?お前なんでこんなとこで寝てたんだよ?……いや、違うか。気を失ってたようだな」






顔から笑みを消し低く落ち着いた声で尋ねられ、その声色に私も徐々に落ち着きを取り戻し自分に何が起こったのかを冷静に考えた……。






「あの……実は私も分からないんです。どうして知らない場所にいるのか、どうして……生きているのか……」






あの世界に別れを告げて闇に逃げ込んだのにどうして私は生きてるんだろう……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る