案外悪くない①
「それでは、これからよろしくお願いします」
全くよろしくする気などなさそうな態度でそう言い、ロベリアは踵を返す。
他の者達もそれに続き、さっさとこの場を去っていった。
結局、一度も私に頭を下げなかったわね。余程、甘く見られているみたい。
一人部屋に取り残された私は、これから始まる日々に不安を抱く。
『上手くやっていけるだろうか』と悩みつつ、自身の手を見下ろした。
と同時に、まだウェディングドレス姿のままだと気づく。
早く着替えないと、初夜が……あぁ、でも旦那様は来ないかもしれない。
結婚式すら、まともにやらなかったのだから。
とはいえ、このままという訳にも……。
ドレッサーの上に置かれたベルを見やり、私は立ち上がった。
が、結局ソレを取りに行くことはなく……自分でクローゼットを開ける。
だって、きっと使用人を呼んでも来てくれないだろうから。
先程の態度を思い出し、私は小さく
そして、実家から持ってきたドレスを一つ手に取ると、ウェディングドレスに手を掛けた。
……やっぱり、一人で着替えるのは無理があるわね。
でも、やらなきゃ。
『ここに味方は居ないのだから』と自分に言い聞かせ、私は何とか服を着替える。
「さすがに満身創痍ね……早く休みたい……けど、念のため起きておかないと」
『もし、旦那様が来たら』と考え、私はベッドに腰掛けて夜明けを待つ。
間違っても寝ないよう、幾度となく自分の腕や太ももを
と同時に、眠った。それはもう気絶するかの如く。
これまでの過労と睡眠不足もあって、本当に限界だったため。
────なので、私が目覚めたのは丸一日経過したあとだった。
「さすがに寝過ぎたわね……でも」
そこで一度言葉を切り、私はベッドから身を起こす。
「頭の中が、凄くスッキリしている」
昨日までは疲労のせいか、思考が霞むような感覚を覚えていたものの、今はとても快調だった。
何とも言えない爽快感と解放感に包まれつつ、私はベッドから降りる。
「あら、体も軽いわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます