第8話 こちらの国

 マクスウェルはノビアス王国の専門研究員らしい。それらしい仕事はツクモたちは現時点で見てはいないし、何をするかも不明だった。研究所を持っているのも謎だ。

 未だに王権制度という気もするが、地球にも現時点で王国は沢山あるので政治に関与しているかいないかの違いだけだろう。

 超大陸一つだけで地球のように新大陸や南極大陸はないとのこと。ノビアス王国は海に面しているので塩を輸出しており経済も安定。隣接している国とも友好関係を築いて何十年も戦争をしていない。

 魔王も居なければ、魔族も居ない。魔法が使える人間種の総称は魔法使いだし、魔女も悪ではない。

 なんで呼ばれたのか?それは観測者理論実証の為の実験結果。マクスウェル個人が地球の魔力を手に入れる為に呼ばれた人間。

 使命も無いし、命令も無い。王様にマクスウェルが異世界人を召喚、というか釣りをした事を報告してもいない。いきなり、王様に地球人ですよろしくお願いしますではないのだ。

 年齢不詳の自称ダークエルフのおもちゃ、が二人の立場だった。


 もちろん、それを良しとはしないのはツクモである。

 積極的にマクスウェルの許可を得て文献を漁っているが、数時間では王国の歴史とダンジョンの知識が増えただけだった。

 

「ねぇ、九十九。ダンジョン行ってみない?」

「なんで?」

「ここに居ても暇だし、ほらレベルアップ?してみたいし」


 戦闘能力を持たないマコトはツクモが居なければ戦えない。戦いにすらならないが正しいのだが、それは些細な問題だ。マコトの言う事は間違っていない限り聞くのがツクモだったからだ。


「それなら、外に出られるようにマクスウェルに言わないとな」

「うん!」


 少し探すとマクスウェルはすぐに見つかった。なぜかやたら後ろを気にしている気がしたが。


「外に出たいの?研究所の外の衣装と街の衣装は少し違うけれど、最近や水を掘る出る石油から作られた化成繊維の服なんかも作られてきたし、そんなに違和感ないかも?」

「マクスウェルさん、外というかダンジョンに行ってみたい」

「ダンジョンに……か。まあ、浅い層なら大丈夫かな。学生がバイト代わりに魔石集めるてるし、いいよマップの使い方分かる?」


 ステータスブレスレットは地図機能もある、目的地を入力すると地球で言うAR技術の様に足元に矢印が出る。今日は超初心者ダンジョン全三層。

 小学生程度の年齢でも入れる。ただし、ボスは倒していいが、奥のダンジョンコアを壊して攻略するのは厳禁。ダンジョンが壊れてしまうからだ。


「九十九、武器借りる?」

「いらない、素手で十分だ。真琴は盾借りとけ。軽いヤツな」

「分かった」


 二人のダンジョン初挑戦はこうして始まった。



 

 

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