第2話 UFO 落ちて来る

 黄金岳の頂上近くの開けた場所に望遠鏡を設置するツクモ。


「下弦の月だが、天候は良好。絶好の観測日和。日和は違うかな」

「細かいなぁ」


 正直どっちでもいいマコトはペットボトルのスポーツドリンクを飲み始める。マコトはアクエ〇アスよりポカリス〇ット派である。飲む点滴と呼ばれるその飲料は体の隅々まで染み渡る。火照った体に丁度いい。


「ほら、タオル。体冷えると風邪ひくぞ?」

「うん、ありがとう」


 ツクモの優しさにおもわず胸が熱くなってしまうのは恋する乙女としてはしょうがないこと。


「で、どのくらい観測するの?」

「ん~、携帯蚊取り線香の残り時間を考えると二時間くらいかな」

「その間、スマホでナンプレやってるね」

「ん」

 

 黄金岳は電波が立つ。どうやっても遭難できない山なんて呼ばれていたりする。マコトがやるのは懸賞付くナンプレであるが。お金持ちの割と金遣いは普通なマコトはアルバイトしたいのだが、親に反対されている。片瀬家の人間がメイドの格好とは何事だと、言われてしまったのだ。

 ただ、可愛い恰好が出来てお金がもらえる素敵なお仕事だと思っていた分、ツクモにかなり慰めてもらった。

 

 ナンプレに夢中になって何時だろとスマートウォッチを確認すると、一時間半も経っていた。ツクモに声を掛けようとして、それに気付いた。


「九十九、あれ。ナニ?」

「ん?」


 光の玉が少しずつ大きくなってこちらに近づいて来るように見えるのだ。


「望遠鏡で見てみて!」

「わ、分かった」


 望遠鏡を覗くツクモ。しかし、そのレンズに光る物体は写っていない。

 思わず望遠鏡から空を見るとじわじわと光る物体、未確認飛行物体は大きくなっていく。


「なんだあれ」

「スマホでUFO撮影! 万バズり確定! 撮影しなくちゃ!」

 

 UFOを撮影すべくムービーモードでマコトはスマホを構える。が、


「あ、あれ?」


 スマホの角度は合っているのに目には見えても撮影出来ない。その間にもじわじわと大きくなっていく未確認飛行物体。


「あれ、こっちに向かってない?」

「嫌な事言うなよ真琴」


 そう言った途端、周囲の森がざわめきだした。羽音の様な細かい音も聞こえてきくる。それも少しずつ音が大きくなって来ている。

 二人とも本能的にヤバいとその場を離れようよするが動けない。固定された様に体が動かない。まるで空間ごと固定されているかのようだ。

 声が出ない。怖い、助けて。そう思うマコトだったが、ツクモは光る物体を睨みつけていた。何とか体を動かそうと歯を食いしばって動かそうする。微塵も諦めていなかった。その意志に屈服した様に少しずつツクモの体が動き始める。マコトを守ろうと必死に足掻いた。


 唐突に光が弾け、その衝撃波で二人は意識を失った。






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