未確認飛行物体衝突による次元の裂け目、異世界についてのレポート

神城零次

第1話 天体観測

九十九つくも早いよ。もう少しゆっくり行こう?」

「普段車移動ばっかりしてるから足腰が弱くなるんだよ、真琴まこと

 

 近藤九十九こんどうつくも片瀬真琴かたせまことの二人は近所の山。通称、黄金岳こがねだけの山道を重たい望遠鏡を運びながら登っていた。

 力持ち、もとい超が付く馬鹿力のツクモにとっては苦にならないが、後ろから付いていくマコトにとっては苦行だった。

 片手で望遠鏡を担ぎながら強力LEDライトで前方を照らすツクモは歩く速度をゆっくりにした。蒸し暑い八月の山の中を登山靴にロリータファッションを合わせてくるのマコト。登る前にふもとで待っているはずのマコトの運転手の忠告を可愛さ優先でローリタを選ぶマコト。渋々厚底ブーツではなく登山靴を提案したのはそっちの方が武骨でギャップが可愛いと説得した結果である。ツクモはグリッブ力の強いスニーカーに無地で無味乾燥な長袖シャツ長ズボンである。ファッション?なにそれおいしいの?を地でいくツクモだ。

 

「やっぱり虫が多いな」

「その強力ライトのせいだと思う」


 カブトムシでも寄ってきそう明るさを持つライトである。ツクモの父親のキャンプ道具を借りてきた。ソロキャンプ用だからかライト周囲五メートル明るすぎるくらいの明るさである。


「いや、足元が不安だからわざわざ借りてきたのになんて言い草だ」

「限度があるとそろそろ知って!」


 ツクモは色々とやり過ぎてしま性質である。道で女性がナンパされているのを止めたら、町中はおろか近隣の県の不良を根こそぎ潰してしまったのは去年のこと。夏休み前に生徒指導の先生は出掛ける時はマコトを必ず同行させるように厳命した。マコトはストッパーである。彼女?の言う事なら聞くツクモは学校内で浮いていた。ボッチである。ちなみにマコトは性別は男である。男の娘で、もちろん付いている。家は超が付く億万長者。一人息子の教育を間違えたのか、反抗したのか、単なる趣味か、昔から女装している。ツクモは昔からいつも可愛いと絶賛している。


「宿題もあるのに夏休み初日に登山するとは思ってなかった……」

「いい運動になるだろ」

「限度があるてってさっき言ったよね!」

「左様で」


 まったく反省してないツクモの様子にため息が出るマコト。いつもの事だと思ってしまう自分が悲しい。


「で、今日は何見るの?」

「月のクレータ」

「それ、見て楽しい??」

「ものすごく」

「ならいいけどさ」

 

 中肉中背に見えるツクモの身体の後ろ姿につい見惚れてしまう。無いはずの子宮がうずく。ツクモの家は古武術を伝える家系、簡単に言うとマコトのボディーガードの担う家系であるが、いつもツクモの後ろを付いて行く、立場が逆なマコトの方だった。幼少の頃から鍛錬を重ねる。その肉体はマコトの大好物である。

 まあ、マコトの体力でなんとかできるわけないのだが。妄想は自由である。

 


 

 

 

 

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