月狩りの森

イオリ

第1話 Veiled Tale


 鬱蒼と茂る森の奥深く。薄暗い葉陰の隙間から、少年が誰かを見送っている。ひっそりと、隠れるように立ちながら。


 少年はずっと向こうにある森の入り口へと目を凝らしていた。そこには2人の男女の人影が、少年の視線に気づく様子もなく寄り添っている。

 少年の真紅の瞳は少女の方に注がれていた。だが彼女は傍らの青年に優しい眼差しを返していて。見つめ合う2人の間に、少年が入れる余地はない。


 やがて森から離れていく2人。見届けることしかできない少年。


 ふと少女がこちらを振り向く前に、少年は目を伏せた。


(君の姿が消えていく)


 ――――さようなら。


 実りの季節はもう来ない。

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