第15話

次の瞬間、美保奈は鳥居の前に佇んでいた。


「すまなかった」


 何もない空間から、眼帯の男が謝る声がかすかに空気を震わせる。美保奈はその場にうずくまると、長い間声を殺して泣きじゃくった。トカゲの神に愛されたが故に人の道を外れた眼帯の男と、眼帯の男に気にいられたが故に妖怪にさらわれた美保奈。美保奈は何よりも、眼帯の男が一人で悲しんでいるだろうことが苦しかった。




 美保奈はそれから毎日神社に通った。しかし眼帯の男が姿を現すことはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る