第12話
「これは……」
眼帯の男が美保奈のいない部屋に戻った時、部屋にあるあらゆるものが泣いていた。花瓶、掛け軸、障子、棚……それら全てがしくしくとすすり泣いていた。
「お前達、泣いているだけじゃ分からんぞ! 一体何があった!?」
皮手袋の問いかけに花瓶が答えた。
「あたしたち止めたんだよオ。でもあの子、聞こえないみたいで……」
「連れ去られちまったよオ。でっかい毛むくじゃらが抱えていったんだ」
花瓶に続いたのは掛け軸だった。眼帯の男はゆっくりと数回瞬きした。
「たぬきか、狐か……いや、関係ないな」
静かに一歩、眼帯の男は床の間へ踏み出した。その瞬間、もの達の泣き声がピタリとやむ。
「あの子を傷つけるものは消すのみだ」
更に数歩進んだ男は刀掛けの太刀を手に取ると、流れるような動作で帯刀した。眼帯の男は瞳に真っ赤な怒りを湛え、早々に屋敷を出ていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます