第8話 対戦ありがとうございました。
「じゃじゃ〜ん!どうですか!?似合ってますか!?」
「お〜、似合ってますね!可愛いです!」
夜ご飯を食べ、お風呂にも入り終わった僕らは、セラフィナさんのパジャマお披露目会をしていた。
「ウグッ!でも慣れてきたぞ......偉於さんの攻撃には......!これでも優秀な戦闘系だったんですから......!」
「どうしたんですか、急に。僕、攻撃とかしてないですけど」
「鈍感偉於さんめ、私のドキドキを何だと思っているんですか......。これでも一応女王様なんですよ......。」
彼女と過ごす三回目の夜もいつものように楽しい時間が流れていた。
「せっかく偉於さんに買ってもらったパジャマ、何としてでも可愛く見せなければ......!」
「変な小細工するよりも、ありのままのセラフィナさんの方が可愛いですよ」
「ぐわーーーーー!駄目だ、偉於さんには勝てない......。」
「だから、僕何か言いましたか?」
どうやら僕がなにか言っているそうだ。でもそれが何なのか彼女が教えてくれない。
「そういえば!私、思ったんです!あだ名呼びして欲しいなって!」
「あだ名ですか?どういう風に呼ばれたいとかあります?」
「え?年頃の男性はあだ名呼びに動揺するって聞いたんですけど、動揺、しないんですか?」
「どうなんでしょう?人によるんじゃないですかね?僕はそんなに......」
女の子との付き合いが得意な訳では無いが、ここまで親しくしていると、その辺に抵抗がなくなってきて切る気がする。
「驚かないんなら良いんですよ......。一方的な気持ちなんだってよく分かりましたよ......。」
「一方的?」
「私なりの乙女心ですっ!」
彼女は「ふぅ」と一息ついて、ソファに座り直す。
「呼ばれたいあだ名......。家族からも『セラフィナ』って呼ばれてましたし......」
「それなら、『セーラ』とかどうですか?短くて響きもいい感じです」
僕の頭の中にパッと浮かんできた『セーラ』という名前。
我ながらなかなか良いのでは無いだろうか。
「良いじゃないですか、セーラ!気に入りました!どこかで呼ばれたことがあるような安心感があって良きです!じゃあ今からはそう呼んでください!」
「分かりました、セーラさん。じゃあ、セーラさんは僕のことを『偉於』って呼び捨てにしください」
僕も親しい感じで呼んでもらいたい願望があったからいい機会だ。
「い、偉於......っ!危ない、危うく『さん』を付けるところでした偉於さん。......って、言っちゃいましたよ!」
「まぁ、これから慣れていきましょう、セラフィナさん。」
「あぁーっ!偉於も早速間違えてる〜!」
「もう間違えませんよ、セーラさん!」
セーラさんとガヤガヤ言っている時間が、今の僕には一番楽しい時間だと思った。
「それじゃぁ、時間も時間ですし、もう寝ますか。」
「そうですね、寝ましょうかっ」
何処となく不思議な人だが、一緒にいると安心できる。まるで前世は夫婦だったのではと疑ってしまうほどに。
次の日の朝、いきなりセーラさんにに話しかけられた。
「偉於〜、私が偉於の学校に転校生としてやってきたら嬉しいですか?」
「楽しそうですけど、人がいっぱいいるところでは、セーラさんとあまり仲良くできないので、ちょっと複雑かもしれません。」
すると彼女が、朝食を作っていた僕のもとへ近寄って来る。
「どうしてですか?」
「まぁ、セーラさん可愛いから他の男子にモテモテで僕と話す時間も少なくなると思います。それに、イケメン男子とセーラさんが恋愛関係になって欲しくないっていう独占欲ですかね?」
「もぉぉぉっ!偉於のアホっ!私の心臓が破裂しちゃいますよ!」
セーラさんがまた赤面する。定期的に赤面するが、原因が本当にわからない。
「セーラさん、定期的に顔が赤くなりますけど、熱、あります?病気じゃ無いですよね?念の為、病院に......」
「凄い、ホントに鈍感過ぎる......。私はもう落ちてるんですから、これ以上心臓を粉砕しに来ないでください......。オーバーキルですよ......」
「鈍感?落ちてる?オーバーキル?何のことですか?」
セーラさんの声が震えている。僕は疑問に思って聞いてみた。
「対戦ありがとうございました。偉於には一生勝てる気がしません......。」
元気なので、どうやら熱では無いらしい。それならいつかセーラさんの赤面の原因が分かる日が来るだろう。
「朝ご飯できましたよ。机に並べましょう」
「はーいっ!」
次の瞬間、
ドーーーーン!
外にとてつもなく大きな音の雷が落ちる。
「わぁ、びっくりした〜!」
「あれ、もしかして偉於は雷が怖いんですか?」
セーラさんは強気だ。
「逆にセーラさんは雷、怖くないんですか?」
「私は戦闘系でしたから、大音量には慣れているのです!」
セーラさんが「えっへんっ!」と胸を張る。
「今の雷、僕の人生史上、かなり大きい方だったと思います......。」
「たしかに......。今の雷は上級魔法に匹敵するくらいの大きさでした......。こっちの世界では自然でもあんなに大きな雷が落ちるんですね」
セーラさんも目を見開いている。
僕らは窓の外を見る。
「ぱっと見、周りで家事とかは起きてなさそうなので良かったです」
「この雨も明日の朝、偉於が学校に行く時間には止んでるといいですね!」
彼女はそう言った後、てるてる坊主をカーテンレールに飾ってくれた。
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