終章

第57話 戦後処理

 バルファスが去った後、ゲルズさんはゴッドランドの人々に性欲を返し、彼ら、彼女らは活気を取り戻したが、当然、国家に対する叛逆を行ったゲルズさんは、無罪放免とはいかなかった。


「国外追放の上、今後一切我が国への入国を禁ずる」


 フレイヤさんの父、ニョルズ王が下したその判決は、死罪の次に重い処分だったが、彼女にとっては幸福なものだったかもしれない。


 祖国に戻り、肩身の狭い思いをしながら暮らしていくよりも、日本で新たな人生を歩むほうが、ゲルズさんは楽しく、充実した人生を送れるはずだからだ。


 実際、バッグサーの面々も、銀髪にをした上で、久しぶりに活動に参加した「須藤すどう江梨子えりこ」のことを、好意的に迎えてくれた。


 今の彼女は給料を手渡しで払ってくれる個人経営の飲食店でバイトをすることによって生計を立てながら、アパートの僕が住んでいる部屋の隣で暮らしているが、ゆくゆくはNPO法人などに所属して、虐待やDVの被害者を守り助ける仕事をしていけるようになれば、本人の罪の意識が薄れるだけではなく、社会貢献にもなって一石二鳥なのではないかと思う。


 もちろん、ゲルズさんを追い詰めた二人――スノリエッタ公とフレイ王子に対しても、相応の処分が下された(前者に関しては僕やフレイヤさんが王に告げ口をしたわけではなく、フレイを裁く過程で、露見してしまったのである)。


 過去を悔い、罪滅ぼしのため勇者たちに協力した公爵は、半年間の謹慎と当面の公職追放という、比較的軽い処分で済まされたが、反省の色が見られない王子は王位継承権を剥奪されるという憂き目に遭い、代わりに今回の騒動を収めることで有能さを示したフレイヤさんが皇太女となった。


 概ね妥当な判決ではあると思うのだが、フレイは軟禁されたわけでも、臣籍降下が行われたわけでもなく、王子として依然、それなりの権威と影響力を保持しているのが、これから宮廷社会で戦っていかなくてはならない僕たちとしては、大きな不安要素である……。

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