第48話 意外な協力者
翌日、再びゴッドランドを訪れた僕たちが、王に事情を話し、協力してくれる人物を募ってもらうと、意外な人物が名乗りを上げた。
「……何を、企んでいるんですか?」
王城の一室――以前、フレイと話した応接間にて、その人物――スノリエッタ公に、疑念の目を向けながら僕は尋ねる。
フレイヤさん曰く、スノリエッタ家は魔法の名門で、特に知識の面においては右に出る者はいないとのことだった。
バルファスがゲルズさんに目を付けたのもそれが理由の一つだったと考えれば、そのことに関しては納得が行くのだが、娘を道具のように扱い、今回の騒動の遠因を作った男が今更協力を申し出てくるとは、いったいどういう風の吹き回しなのか。
「滅相もございません。私は、ただ罪滅ぼしがしたいだけなのです」
机の向こうに腰掛けた公爵は、手振り身振りを交えながら、こちらの言葉を大袈裟に否定した。
「罪滅ぼし?」
その発言が信じられず、僕は聞き返す。
「はい。実はあなた方が去った後、娘の教育を担当していた女中に話を聞きまして……」
「公爵、わたくしたちは情報を提供した者を罰しないように命じたはずですが……」
と、呆れたのは僕の隣に座ったフレイヤさんである。
あの誓約書は、王女が公爵に書かせたもの――言うなれば、公文書に近い性質を持ったものだ。
いくら彼でも、そう簡単に反故にするとは思えないが……。
「ええ、覚えておりますとも。事実、私はその者を罰してはおりません。ただ、話を聞いただけです」
僕とフレイヤさんは、思わず顔を見合わせた。
それなら確かに、誓約書の内容に違反してはいない。
「何の目的で?」
「私は今まで、自分のやったことは正しかったと、信じて疑いませんでした。ですが、エストリエの正体が我が娘だったと知って、自分の行いに自信が持てなくなってきたのです」
呆れ半分、困惑半分で僕が質問すると、公爵は懺悔をするかのような口調で語り始めた。
「そこで、その女中に尋ねることにしたのです。『お前も、私が間違っていると思うか?』と。すると彼女は処罰を恐れずに、毅然と『はい』と答えました。その時、私はようやく、自分の矮小さを自覚するに至ったのです」
「…………」
僕は少なからず驚いていた。
公爵が改心したことに対して、ではない。
いや、それも多少はあるが、それよりも僕に話を聞かせてくれたあの女性が、想像以上に高潔な精神の持ち主だったことに対する驚きのほうが大きい。
おそらく身分の低いであろう乳母が、大貴族の公爵に意見するなど、相当の勇気が必要だったはずだ。
仮に、スノリエッタ公が事前に「処罰はしない」と言っていたとしても、そんな口約束など、到底信用できるものではないだろう。
もし、僕が彼女と同じ立場に立たされた時、同じような行動が取れたかというと、難しいように思う。
この時、僕は自分が先祖から受け継いだ地位と力を利用して、己にできることをやっているだけの凡庸な男に過ぎないのだということを強く実感した。
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