第24話 勇者のファンサービス
翌朝。
「おはようございます、結人さま。早速ですが、裸の写真を撮らせていただけませんか?」
僕たちが一緒に住んでいるアパートの部屋で、フレイヤさんは開口一番、とんでもないことを言い出した。
「…………は?」
「直接触るのがダメなのでしたら、せめて自慰行為の助けになるものが欲しいと思いまして……」
「あー……ああ……なるほど」
言いたいことはわからなくもないが――そういう方向に行ってしまったか。
こちらは普通に「あなたとしたいです」と言われたら、受け入れるつもりだったというのに(なお、自分から誘う勇気はない)。
「仕方ないですね……」
僕はパジャマの上下を脱ぎ、スマホのカメラを起動してフレイヤさんに手渡した。
光量や色合いの調整など、複雑な操作はまだ無理だが、「ボタンを押して写真を撮る」だけなら、既に彼女は難なく行えるようになっているので、その点を心配する必要はない。
「これで良いですか?」
「ああ……結人さまのお体、とっても逞しくってステキです……」
腰に手を当てながら僕が尋ねると、フレイヤさんは今にも鼻血を出しそうなうっとりとした顔をしつつ、スマホの撮影ボタンを押した。
カシャッ、とシャッター音が響く。
正直な話、僕は身長が高く肩幅が広いというだけで、それほど筋肉質というわけではないのだが――おそらく、海やプールで剥き出しになった男性の上半身を見た経験がないであろう彼女には、逞しいように見えるのだろう。
「あの……可能であれば、下着も脱いでいただきたいのですが……」
僕がそんなことを考えていると、フレイヤさんはこちらの股間のあたりを凝視しながら、更なる注文をしてきた。
「い、いや、流石にそれは……」
全裸になるのが単純に恥ずかしいということもあるが、今の僕は念のため、貞操帯を装着しているのだ。
元々、フレイヤさん対策に購入したものではあるが――着けているところを写真に撮られるのは、絶対に嫌だ。
普通に裸を撮られるほうが、まだマシである。
それにスマホは一台しかない以上、撮った写真をフレイヤさんがいつでも見られるようにするには、コンビニで印刷をしなければならないのだ。
貞操帯を着けた自分の写真をプリントアウトしている場面を第三者に見られたりしたら、最悪の場合、警察に通報される可能性すらある。
「お願いします、結人さま!」
「ダメですって!」
「そこをなんとか~!」
「ダメなものはダメ~!」
強引に僕のボクサーパンツを脱がそうとするフレイヤさんと、なんとかそれを阻止しようとする僕。
こんな調子で同居人とじゃれ合っていた結果、僕は火曜日最初の授業である二限に遅刻しそうになってしまった。
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