第23話 不審な新入部員

 午後八時過ぎ、バッグサーの活動が終わった後。


「……あなたたちは、バスで帰らないの?」


 無料送迎バスの発着場をスルーして駐輪場に向かう僕たちを見て、江梨子さんは意外そうな声で言った。


 教室では下半身が机で隠れていたせいでわからなかったが、太ももがほとんど剥き出しのショートパンツと、かかとの部分が高くなっているサンダルを履いており、正直、目のやり場に困る。


「はい。バイク通学なので」


「……そう。残念だわ。もう少し、話してみたかったんだけど」


「…………」


 やはり妙だ。


 彼女は積極的に、他人と関わろうとするタイプには見えない。


 実際、バッグサーの活動の最中も、ずっと受け身だった。


 なのに、なぜ僕たちに対してだけは、こんなにも強く関心を示すのだろうか。


 興味を持つ相手が僕だけなら、一目惚れをした可能性とかもあるかもしれないが、フレイヤさんのことも気にしている様子なのが引っかかるのだ。


 そういえば、「スドウ・エリ」という名前は若干、「エストリエ」と響きが似ているような気がする。


 仮に江梨子さんとエストリエが同一人物なのであれば、パリピやバッグモンに対する異様なまでの理解度の低さにも、夜なのにサングラスを外さずに素顔を隠し続けていることにも、この中途半端な時期に入部してきたことにも説明がつくが――


 いや、流石に考えすぎか。


 バッグサーは女子部員があまりいないので、数少ない同性のフレイヤさんと仲良くしたくて話しかけている――そう解釈したほうが自然だろう。


 僕にも絡んでくるのは、おそらく彼氏面でフレイヤさんと一緒に行動しているためだと思われる。


 要するに、僕はオマケだったというわけだ。


 最近、フレイヤさんに「勇者」と持ち上げられたり、彼女と「融合変身メタモルフュージョン」して怪物と戦ったりしたせいで、少し自惚うぬぼれていたかもしれない。


 あるいは、フレイヤさんのことは信じられるようになっても、まだ彼女以外の女性に対しては、少し疑心暗鬼になってしまうのか。


 いずれにせよ気を付けないとな、と自戒しながら、僕はバイクのリアボックスを解錠して、グローブとヘルメットとプロテクターを取り出した。

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