溝は海で埋めて海溝に

「バカバカバカバカバカバカバカバカバカ」

「あーバカで良いよ、お前が悪く言われてるのに気が付けなかったバカだからな」

「バカ、バカバカ、バカバカバカ・・・」

「うっせ、一人で抱え込んでるお前だってバカだバーカ」

 まだバカと罵倒してるが、その勢いも落ちてきてる。

 言い方も罵倒のようなものから、甘えるものに変わってきている。


「バカ、バカ・・・」

「もう、無理すんな、俺に頼れ」

「・・・助けて・・・!」

「おう!助けてやる!」

 その言葉が嬉しかったのか、今古賀さんがより強く大海君を抱きしめてる。

 嗚咽も聞こえてきてるが

 それを聞かせまいと大海君が学ランを今古賀さんに被せてる。


「雫、離れよう」

「そうだね」

 これ以上は今古賀さんの名誉の為にも離れよう。

 それに、もう大丈夫だろう。

 二人に出来た溝は、大海君の海で思いっきり沈めた。

 海溝に変えて海の一つにしてしまい

 今古賀さんが一条ハーレムから離脱する為の大海君という船が来た。


「一条ハーレム、遂に金船先輩一人になったね」

「もうハーレムって言って良い物じゃ無くなってるけどね」

「一人だったらただのお付き合いだものね」

 そう言って一条ハーレムが崩れた事を雫と話し合う。

 皆それぞれの闇を抱えてたみたいだが

 それぞれを思う人たちが

 その闇を受け入れてくれて共にいてくれると言った事で

 皆一条ハーレムから抜け出す事が出来た。

 ・・・雫って闇あったかなって思ったけど

 蔑ろにされてた時が闇だったような気がする。闇というより病みだけど。

 金船先輩に闇は無いだろうって思ってるけども

 あの人何で一条から離れないんだろうか

 拘らなきゃいけない何かがあるとか?


 と、一条ハーレムを話題にして花咲かせてるが

 これは一種の現実逃避だ。

 一条が問題ではない。問題は周りの声、悪評の方だ。

 ただ雫は逃げられないよとばかりに話題に振ってきた。

「悠、問題は悪評だよ」

「そう、だね・・・2-Dとかの悪評、どうするつもりだ」

 彼なら気にしないと言い切れるが

 それでも今古賀さんが気にする可能性がある

 拗れた原因でもあるからだ。

 ただ彼女の悪評はどちらかと言えば私怨寄り。

 ハーレムにいた状態での悪評はこれからの付き合いで払拭できるだろうが

 私怨による悪評はどうするんだ。


 澄ました態度が気に食わない

 見下した態度でこっち見てくるのウザい

 こいつ等馬鹿ばっかだって思ってこっち見てるよなあれ

 勉強できるからってお高く纏まって


 こんなのが流れてる、どうするんだ大海君

 っと思っていたんだが、それを全部流してしまう出来事が起こった。

 その時にまた言うけど今言わさせて


 お前バカだろ良い意味で。

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