愛すべきバカ

「一条誠はいるかー!」

 一条誠を探す声がする。

 それはとても大声で廊下は勿論

 場所によっては隣の教室にまで届く程の声量だった。

 その声の主の元に僕と雫は向かった。


「俺が一条だが」

「よし!一条誠!俺はまどろっこしい事が苦手だ!」

「お、おう……」

 2-Aの教室で一条と大海が対面している

 周りがなんだなんだと色んなクラスからこちらが気になり

 何が始まるんだと僕達含めて野次馬が集まりだしてる。

「そして今古賀を悪く言ってる奴がいるのがムカつく!」

「お前何が言いたい」

「だから今!行動で示す!」

 そう言ったのを確認した後、顔を真っ赤にした今古賀さんがやってきた

「バカ、変態、痴漢、やる事大胆……」

 罵倒を口にしてるが

 それが罵倒してる声ではなくて甘えるような声だった。

 何となく二人の関係を察する事ができるようなもので

 察しが良い人は、もしかしてこれ目の前で略奪宣言かと呟いてる人もいる。

 そして大海の横に並び立ち、お互い向き合った。

 今古賀さんは眼鏡が壊れたら困ると眼鏡を外して。


 うん、これ流石に僕でも無理だ。出来ない。

 でも大海君はこれが全部解決させる手段と思ったんだろう。

 確かにこんなの出来るくらい思い合ってる

 誰にも渡さないという覚悟を表れと言える。

 あの今古賀さんもバカな真似ができると証明できる。

 でも言わさせて、お前バカだろ。良い意味で


 一条の、皆の目の前で二人はキスをした



 きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


 それぞれの黄色い悲鳴と雄叫びが聞こえる。

 今古賀さんが大海君の首の後ろに腕を組んでキスしてる

 つまり無理やりじゃない、というのが分かる。

 そもそも二人でこれをすると決めてたんだ、望んですらいるんだろう。

「一条誠!お前から今古賀を奪わさせて貰う!

 今古賀の事グチグチ言って来たら誰であろうと容赦しねぇ!覚悟しろ!」

 と集まった皆に宣言して、今古賀さんを連れて教室から出ていった。

 近くを通った事で今古賀さんの呟きが聞こえてきた。


「バカ、向こう見ず、スケベ、変態、ウソ、ありがとう、好き」


 淡々と、しかし甘えた声で罵倒しながらも

 最後にお礼と思いを伝えて。


 一方、一条は

 目の前で繰り広げられた出来事に理解が追いつかず

 口を開けて放心していた。


 おい一条、生きてるか?

 可哀想に……強く生きて……

 ただ第三者だと面白いわこれ

 てかこれで残り財閥の異端児だけか、笑える

 でもなんで一条は引き止める動きしないんだろうな

 だよね

 ハーレムを作って置いて持て余してたとか?


 残りは財閥の異端児、金船真帆のみになった

 が、あの人はなんなんだろうか。

 もしかしたら雫より先に抜けてる可能性があるんだけど。


 そして周りの声の疑問もそうだ。

 なんで、一条は動かない


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る