女の子達が近くにいる理由にお前はもういない

 2学期の終業式を迎える数日前

 全校集会の朝礼があり早く終わらないかなーと1年は思う事だろう。

 だが僕ら1年以外は待ってましたと言わんがばかりに

 この日を楽しみにしていた。

 全校集会の朝礼を楽しみというのは変だろうが、この学校はこれをする。


「えー、もう少しで2学期終業式です」

 校長が台座に上がり、読み上げを開始した。

 1年は終業式にしてくれよとげんなりと、他はまだかまだかとそわそわしてる。

「終業式をさっさと終わらせたい為、今ここで伝えるべき内容をお伝えします」

 1年は呆気に取られてる。そりゃそうだ。

 こんなの言うのはこの校長だからじゃなく、そういう長く続く風習だ。

 内容自体は陳腐な物

 寒さに気を付け、体を労わる様にだとか。

 もうすぐ3学期、進学、就職、学年が上がる事への激励。

 

 ありきたりを言い終えた事で校長が宣言した

「ただいまより、お疲れ様会を開始します!」

 1年以外全員雄たけびを上げ、1年は周りの反応にビビっている。


「こんにちは東谷先輩。その、お疲れ様会ってなんですか?」

「あ、白金君達いらっしゃい」

 白金君は富士本さんと一緒に困惑した様子で僕に聞きに来た。

 まあ普通そうなるだろうなと苦笑いと言った感じでお疲れ様会の内容を伝えた。

 要は体育祭、中間テスト、文化祭準備と開催と片付け

 そして期末テストと息つく暇が無い怒涛なイベントの盛り合わせ。

 なのでこのお疲れ様会はお互いを労わるイベントになっており

 授業を全カットと思い切った事をする。

 どうせする事は3学期でするんだし、校則違反さえしないのであれば

 自主勉強もよし、部活で自主練もよし、友達と駄弁り続けるもよしとなっている。

 ただ流石に登校しないと欠席扱いだから皆来る。


「だから実質授業無し宣言で皆喜んだわけ」

 教師は教師で溜まった物を全部片づけられる時間をくれたから

 それに力を入れられるから助かるとか言ってたっけ。

「で、僕らからのお願いは次の1年には教えないようにって事ぐらいだね」

「良いサプライズっすね・・・」

「私もびっくりしました・・・」

 やられた仕返しとして次の1年には教えないってしてるからね皆

 こういうのも思い出にしていけと箝口令が敷かれてるのもあるけど。

「それなら・・・直人君、一緒に運動しない?」

「お、何をする?」

「えっと・・・その・・・ごめん、耳貸して」

 そう言って顔を赤くした富士本さんは白金君の耳を借りて何かを伝えてる。

 白金君は内容を聞いて視線を動かしながら、そうか?って呟いてる。

「んー。となるとジョギングとかかな」

「う・・・」

「ただいきなり開始しても疲労と筋肉痛で辛いだけだから

 徐々にペース上げよっか」

 てことで二人で運動するらしい。

 白金君曰く、過去に運動関係で色々言われて動かすのが億劫になっているから

 まずは好きになってもらうために楽しめる所から開始するんだとか。

 いきなり筋トレ数十回1セットとかただの拷問で嫌いにさせるだけ

 判定をかなり甘くした筋トレ数回1セットから徐々にと言っていた。

 一番は水泳で遊びながらの運動かなと語っていた。


 白金君達が去って雫と談笑していた所、七瀬さん達が来た。

「ヤッホー二人共。良いの描けたよ」

「見ても良い?」

「もちろん」

 雫が了承を得たので一緒に見させてもらう

 ・・・こ、これは・・・

「どう?舞台はこの学校だけど」

「独創的、だね・・・」

「ホントに・・・」


 グラウンドに大穴が開き、そこから青白い光のようなものが噴出し

 目が黒く塗りつぶされ、青白い何かに纏わり憑かれた人たち

 それがレギオンかのように球体となって大穴の上で集約する様

 逃げ惑う人


 あの、怖いんだけど

「皐月君はどう思ったの?」

「欲望に抗う人と従う人の縮図といったのを感じ取ったよ」

「流石・・・」

 あっけらかんとした様子で皐月君は即答した。

 七瀬さんはそう感じてくれたんだと感動してる。

 違う意味でこの二人の世界には入りたくないな・・・

「じゃ、私次の絵を描くから、まったねー」

 そう言って去って行った。


 雫と自主勉してる所、今度は大海君達が来た

「えっと・・・!・・・っ」

「大丈夫、こいつ等はお前を後押ししようとしてたからよ」

「わ、分かってる・・・その・・・」

 辛抱強く待つ。こういうのは雫で慣れっこだ

「ご、ごめ・・・ごめんなさい・・・」

 と、今古賀さんが謝罪してきた。

 でも何にだ?と思ったら続けた

「ま、前に貴方達を見て・・・逃げたのホントに・・・」

 あーそういえばそんなのあったなと思い出す。

 だがこっちはこっちで相葉から嫌味な姿になっていたらしいし

 今こうやって向こうから来て謝罪してくれたんだ。

 素直に謝罪を受け取ろう。

「良いって良いって、ね?雫」

「うん、大丈夫だよ今古賀さん」

「あ、あり、ありがとう・・・」

 たぶん処世術として無口でいたから

 口にするのが苦手なんじゃないかな?なのが相葉から見た今古賀さんだとか。

「これからも仲良くしてくれるとこっちも嬉しいよ、ね?悠」

「そうだね、大海君もいるし」

「ありがとうよお前ら!」

 と大海君は大声で喜んだ

 そんな二人だが、まだ2年の3学期前なのに同じ大学に進学すると決めたそうだ。

 そして大海君の家に移るんだとか。

 なんでも今古賀さんの父親が大海君を気に入り

 婿入りでもいいぞと大歓迎状態が鬱陶しいから離れたいんだとか。

 冗談か本気は知らないが、二人で決めてるのなら大丈夫だろう。たぶん


 一緒に勉強し、下校時間になったので雫と帰ろうとしてる時

 金船先輩が絡んできた。

「よう東谷ちゃんに雫ちゃーん」

 と言った所で令嬢状態に変えてきた、が、圧は感じない。

「何、特に気にする事じゃない、私も彼氏を作った」

「うぇ!?」

 あの金船先輩が!?誰が受け入れたんだ!?

「ほら、体育祭で私の髪の毛を引っ張った奴。アイツと」

 あの勇者実行委員か・・・え、どう口説いたんだ?

 周りにはまだ一条love状態と思われてるはずだが


 と思ってた所で異端児がでてきた。

「私が止めてって言ってるのに止めず

 嫁に行けないって叫んでるのにも関わらず行けない事に後悔しろって言われて

 傷物にされたって家族に訴えたら囲った」

 ウソは言ってないから質悪いなコレ!?詐欺じゃないか!

「それ、家族が囲ったのって・・・」

「あ、いや、速攻で看破されて説教喰らった」

 あ、流石理解がある家族。騙されなかったか。

「それはそうと、令嬢相手にそれできる豪胆の持ち主だから

 良いなってなってソイツにも真相を伝えて晴れてお付き合いって事よ」

 ちなみに彼氏は目を離すと何するか分からんから

 一緒にいて手綱を握りますとの事。

 ゆ、勇者・・・

「そういう幸せ報告ってだけだ。あ、でもまた絡みにいくから。

 アイツにも引導を渡さなきゃいけないしな」

 じゃあな!と、おそらく勇者実行委員の元へ向かったか、家に帰ったか

 ともかく金船先輩は去った。


 そして今になって思い出した

 一条の存在を


 雫は僕と一緒にこれからの事を考えてる

 富士本さんは白金君と自分の苦手と向き合ってる

 七瀬さんは皐月さんと共に自分が思う絵を描いてる

 今古賀さんは大海君と将来の事を考えてる

 金船先輩も慕う存在が出来た




 慕う気持ちに、近くにいる理由に、お前はもういない

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