金船真帆という、絶対的な令嬢
「・・・元から関わる気は無いよ」
「そうか、ならいい」
「だけど教えてください」
なぜ関わるのを止めろと言うのか、その理由を。
財閥の令嬢である彼女は問題を出してきた
「東谷、これを答えてみろ」
そう言って金船先輩が見せたのは
かつて『鍬』をなんて読むか出題した物だ。
今回は答えを知ってる。
だけど、僕の脳内で警鐘を鳴らしてる
それは絶対言うなという警告音がする。
雫にだったら?と脳内で聞いたら警告音が止んだ
なぜか分からないが、これを金船令嬢に向かって言ってはいけない気がした。
「雫、こっちを向いて聞いてほしい」
「うん」
「『すき』」
「私も悠が好き」
金船令嬢そっちのけで思いを伝え合う
置いてけぼりだが、金船令嬢としては大変満足な反応なようで。
「お金があり何でも手に入る私が
手に入れる事が出来ない愛だな。正直、雨宮には嫉妬してる」
「えっへへへ・・・」
「だが、だからこそお前達二人には
墓場まで持って行ってもらう秘密を教える事ができそうだ」
死んでも言うな
他言無用、そういう内容になるとは一体なんなんだ。
「で、クワをすきと、一般的に変換しない物を答えられたのはなぜだ?」
「金船令嬢が教えてくれたからでは」
悪ふざけで問題を出して来たから、知る事が出来たと言うか
出題してなければ、いつまでもクワで認識していたと思う。
「そうだ、私が出題して答えを教えたからだ」
そして次に語られたものが
彼女が一条に拘りながらも蔑ろにするような事をしていた理由だった。
彼女が、遂に秘密を明かした。
「一条はな、会って間もない時にこれを何の疑いも無く、すきと答えてきた」
「え」
「え!?」
一条の奴、これ一発で看破してたのか!?
どうやって!?待て、教室で聞いた時はクワと言ってたはずだ!
「普通、クワに対してすきって答えてくるか?
しかもお互いの素性をよく分かってない時に」
「いえ、言いません」
「そう、普通言わない。だからこそ即座に看破した一条を警戒したんだ。
そしてあの一斉告白の場、覚えてるか?」
「今となっては嫌な思い出です」
「だろうな。あの場に私もいたが、私はこう思った」
とびっきりのオカルトが飛んできた
そう言ったのと無縁そうな彼女からそれを口にするなんてと思った。
「アイツ、ここにいる私以外の女の子全員を洗脳してる」
「せ、洗脳!?」
ありえない内容が飛んできた事で思わず驚いた。
だが、洗脳したと言われれば思わず納得がいった。
蔑ろに出来る理由も、洗脳で離れないのなら無下に扱う事も平気で出来る訳だ。
そして金船令嬢が話を続けた
「おかしいと思わないか?普通なら一人を選べと迫るのに、誰も迫らない
雨宮は途中で迫るようになったが、一切聞き入れない。
何よりアイツ、個人に対して好きを一切言わなかった。
前に試した時はクワになっていた。
ハーレム前はすきと答えてきたのにな。
変な事を言うがこう判断した。言わないんじゃなく、言えないっと。」
言えない・・・?確かに皆が好きとは言ってたが、個人に言ってる記憶が無い。
「で、調べてたらゲームにハーレムエンドなるものがあってな。
足立遊助に聞いてみた。
ゲーマーで詳しいそうだからな。
そしたら面白い回答が飛んできて、そして納得した。
それなら個人には絶対言えないってな」
一条の身勝手な思いから、ある意味全員助けられた理由でもあった。
そして無理がある難聴鈍感にも納得がいった。
「一条はハーレムエンドにしたのに
個人に好意を言えば個別エンドに変わると恐れた」
「個別エンド?」
「誰か一人と添い遂げた終わりだそうだ。
だが東谷が雨宮と結ばれ恋人になった事でな
アイツが恐れた個別エンドが発生したと判断してる。」
僕が雫と恋人になった事で個別エンドが起きた・・・
ハーレムが崩れたと。
ただ、そう言われれば雫と恋人になってから皆が抜け出せた気がする。
「でもそれだと、一条君が動けば誰かしらは維持できたと思います」
「・・・これは私のそうあってほしいという考えを前提で聞いてほしい」
アイツ、コミュニケーションとるの下手くそで
何言っていいのか分からない可能性がある
そして下種な思考から、奪い返す事もしないし受け入れる気もないと。
襲撃しないのも常識はあるんだろう。
何というか、一条の中身って大した事がない人って思った。
「今までは
切れた事で会話しようにも思う様にできない。それがアイツだと思ってる」
話は一旦切る、そういうつもりなのか金船令嬢が紅茶を口に含んだ
そして紅茶が入ったカップをテーブルに置き、本題に入った。
「最初に手を引けと言ったが、前に外堀を埋めたのが終わったと言っただろ」
「言ってましたね」
「あれが皆離れた事で完全になった。もうアイツは何をしようが動けない」
そして絶対零度の眼差しで言った。
「誰にも悟られずに財閥の令嬢の思考を読め、
ましてや私に洗脳を施そうとしたアイツを放置は危険と判断した。
もし一条誠が何かをする為に動いた場合、即時に金船財閥全体が動く」
その言葉に、僕と雫は縛り付けられた。
絶対強者と対面した恐怖
底知れない恐怖
売ってはいけない喧嘩を売ってしまったような恐怖。
そんな状態とは裏腹に、あ、やっちまったと絶対零度を解いてくれた。
「悪い悪い。まあ言っちゃえばさ。
これ以上関わると金船財閥の闇に触れちまうし
アイツは悪さをできなくしたから気にする事ねーよって事だ」
そう言って金船先輩はいつもの財閥の異端児に戻った。
「拉致して悪かったな。
お前が変に警戒してるから
絶対に聞かれない所で大丈夫である事を伝えたかった」
そう僕たち、いや僕に語って。
言外に日常に帰れと言われた気がする。
異端児じゃなく、令嬢として言ってくれるのなら大丈夫だろうと思い
日常に帰る事にした。
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