雨宮雫と今古賀賢子の差

 橋渡し役がいない・・・それなら誰かが橋渡し役に

 思いつくとしたら相葉だろうか

 しかし、今はその人がいない

「雫、橋渡し役、できそう?」

「ごめん、友梨ちゃんと悠以外まともに相手できない」

 そういえば1年の時、告白の列を作った時

 女の子からやっかみを買ったんだっけ。

 それで相葉と僕以外の関係を面倒に思うようになったんだった。

 だから雫が一条に恋した時、素直に協力して応援するを選べたんだった。

「あー・・・もしかしてまだ継続してた?」

「うん。今は二人が居ればそれでいいし」


「大海君、次は、・・・っ!・・・今日はここまで!帰るよ!」

「え、今古賀?ま、待ってくれ荷物忘れてる!」


 僕らを認識した今古賀さんが、酷く動揺し

 慌てて大海君を帰るのを促した

 僕らから逃げるように


「え、なにあれ・・・」

「私たちを見て逃げた、よね・・・」

 今古賀さんの行動が分からず、もう遅いからとお開きにし

 雫を家まで送った。

 明日、相葉に今日の事を伝えて何があったか分かるか相談して。


 そんな次の日、図書館での出来事を相葉に伝えたら

 何か思い当たる節があるのか、あー・・・と声が漏れ出てた。

「なんでか分かるかな」

「・・・貴方達、悪い事は言わない。干渉するのを止めなさい」

「な、なんで!?」

 二人をほっとけと言う相葉に、納得がいかないといった様子の雫。

 僕だって納得がいかないが、相葉が話を最後まで聞きなさいと言うので清聴する

「私や他の人もたぶんダメ。ちょっと悪く言う人が多いから耳を貸さないかも。

 貴方達は嫌味でしか無いからダメ」

「い、嫌味?」

「雫ちゃんと今古賀さんの違い、言っていくわ」


 相葉が語った内容は、僕と大海君との扱いの差だった。

 

 雫は僕とずっと協力関係でいたのも影響しているが

 雫はハーレムを拒否した行動をしていた。

 お弁当だったり二人きりを狙ってたのが良い例だろう。

 一番はヒモ宣言で雫が去った時に追いかけたのが僕だったから

 ヒモよりずっと一緒にいた僕に鞍替えしても

 なんらおかしくないと思われてたらしい。

 更にお互いを思う余りのすれ違いであるのが

 日常的に過ごしてる姿を見てそう判断された。


 だが今古賀さんは違う。

 大海君を突き放してハーレム入りした事。

 クールぶって嫌味を言っても澄ました態度で言い返さないのが

 気に食わないと言う私怨。

 一条のヒモ宣言を咎めなかったのも悪影響し

 大海君という、愛すべきバカを無下にする憎むべき馬鹿呼ばわりされてる。

 大海君の元に帰ろうと思っても

 悪評が彼にも降りかかる事を恐れてると相葉は予想してる。

 彼の告白を受け入れないのはそういう事と。


「だからね、大海君一人で彼女を動かすしかないの。

 そして貴方達は接触しちゃダメ。

 自己嫌悪からの不登校という形で離脱もあり得るのよ」

 自分たちの関係が、まさか今古賀さんを苦しめる物になっていると思わなかった

 最後にそう思わされる締めくくりだった


「だって貴方達、今古賀さんからしたら。

 一条に靡かなければ、あったかもしれない姿をしてるから」



「悔しいなあ、手伝うと逆効果だなんて」

「どうにかならないかな・・・」

 そう言って干渉するなと言われて、しょげながら帰る僕と雫

「でもまだ希望があるよ」

「お、どんな希望?」

「大海君、まだダメかって言ってた。

 それにまた勉強を教えてる辺り、やり直したい気持ちはあると思うの」

 雫に言われて思った。

 そうだ、大海君はまだダメかって言ってる。

 つまりいつかはいけると思ってる

 二人で勉強会をしてたんだ

 手応えを感じてるんだろう

 彼が諦めない限りまだ大丈夫だ。

「今は大海君が口説き落とすのを待とう」

「そうだね。僕らはテストに集中しよう」

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