崩れていくハーレム

「あ、富士本さん。一条の周りから消えてる」

「ホントだ、白金君やったね」

 体育祭を終えた数日後、一条がいる2-Aの教室を雫と覗いた時に気づいた。

 近くにいた富士本司がいなくなってる事に

 一条は不機嫌オーラを出してるが、周りはそれを面白いと見てる。


 あの子抜けちゃったかー

 妹みたいな子だったよね

 攫って行った男の子、白金君っていうんだっけ

 何でも抜けようとしたのを咎められた時、白金が前に出て守ったらしいぞ

 えー!めっちゃいい子じゃん

 さっき見かけたけど、兄妹かって感じの身長差だったよ

 でも身長差で庇われたのなら、一条の姿を見えないようにしたって事よね

 え、なにそれキュンキュンしちゃう!

 うわ古

 今なんつった

 学年が上の相手なのに。漢だなソイツ!

 てか下の学年に言い負かされたんか一条の奴。カッコ悪


 白金を称賛する声と、一条の状態に嘲笑う声が広がっている


「この調子だったらすぐに終わるかもね」

「ホントにね」

 そして現実に戻ろう

 そう、中間テストだ。

「そういえば中間テストだよ」

「勉強しないとね・・・図書館に行こうか、そこで勉強会しない?」

「賛成、放課後に行こっか」

 僕は図書館で勉強する事を提案し、雫が賛成した


 放課後、雫と二人で勉強会をする為に図書館に向かう

 そこにいるのは人たちは様々だ

 僕らの様に勉強会をしに来た人

 ただただ本を読みにきた人

 図書委員の姿もある

 テーブルの一角を借り、二人で勉強を進める

 鉛筆を走らせる音

 あーだこうだとうねり悩むような声

 よしっと思わず解けた事による漏れ出た呟き


 お互い分からない所を聞いては問題を解きを繰り返し

 頭と手を休める為に休憩にしようとした雫が、ある人に気づいた。

「悠、あそこにいる女の子、今古賀賢子いまこがたかこ

 あの子もハーレムの一人だよと雫に言われた

「今古賀さんの隣にいるの、大海賢二おおみけんじだっけか」

 二人とも、僕たちと同じ同級生だ

 しかしなんだろうか

「男の子とのペアになって行動してる事が多いな」

「そういえば猛アタックしてるって言ってたもんね同級生が」

 元々憎からず思ってた所を、一条に横取りされた形だったのだろうか

 だとしたらなぜ靡いたか分からんのだが

 周りの騒音にならないよう、小声で雫とそう会話しながらそう思った

 本人たちは声量を落としてるつもりなのだろう

 だが静かな空間である図書館では、それも耳を傾ければ聞こえる物だった


大海おおみ君、そこ間違えてます」

「えーこれ違うのかよ・・・」

「嘆いても間違ってるのは変わりません。やり直しです」

「これもそうだけどよ、因数分解ってなんで分解するだよ・・・

 分解したら戻すの面倒だろ・・・」

「それ根本を否定する事になるので諦めてください」

 今古賀さんは、大海さんの勉強を見ている

 だが因数分解で苦戦してる様子だが。

 分解したら戻すの面倒ってどういう発想から来た。

「今古賀も毎回ありがとうな俺の勉強見てくれて。好き」

「っ!・・・バカな人は嫌いです」

「ちぇーまだダメか」

「っ!・・・!・・・えぇ」

 今古賀さんは、なんだか煮え切らない反応をしている

 というか表情を見られないようにしてる

 そしたら雫も見ていたようで、反応した

「あ、あれ分かるよ。私と同じだ」

「どういう事」

 雫は語った

「私と悠は友梨ちゃんが橋渡ししてくれた

 だからすぐにお互いの思いを伝え合う事ができた


 あそこは、橋渡し役がいないからすれ違ったままの可能性がある」


 時間がかかる、そう思った

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