体育祭の終わり

「Aチーム圧倒的だったなー」

「ねートリプルスコアだよ」

 そう言って雫と二人で圧倒的なスコアの差を見る

 3年生A組はヨッシャー!と雄たけびを上げ

 それ以外の組はクソ!勝ちたかったと項垂れている

「ふっふっふ、体育祭お疲れだ二人とも」

「あ、金船先輩お疲れ様」

「お疲れ様です金船先輩」

 そう言って金船先輩が絡んできた

 遊助を引きずりながら

「・・・遊助の奴、何かしたんですか?」

「いや?用事があるのと

 コイツ嘔吐したから金船グループの病院に送り込むだけだ」

 嘔吐の原因、絶対寝不足に今日の体育祭が被ったからだろと思った

 だがそれだけで金船グループの病院?もしかして嘔吐の仕方がマズかったか?

「え、それだけで?」

「東谷ちゃーん、嘔吐も色々な場合があるぜ。

 頭部強打による脳内出血

 熱中症による熱疲労

 ノロや結核だってある。

 寝不足からの自律神経の乱れの可能性もあるからな

 ただの寝不足だと軽んじては駄目だぜ?」

 昨今は色んな病気があるからな、念のためだと金船先輩は語る。

 金船先輩、破天荒ではあるが

 こういう知識をサラッとだせる辺り、財閥の令嬢だと言う事を思い出させる。

「もう足立君、ちゃんと寝ないから・・・」

「それはそれとして全くだ。コイツ届けるから。じゃあな」

「はい金船先輩。また学校でー」

 そう言って遊助を引きずる金船先輩を見送った


「なんでだ・・・」

 一条がそうぼやいてる

 近くに僕たちがいるのにも関わらず、というか目に入ってないかのような様子だ

 なんだか関わり合いたくない空気を出してるので

 雫を連れて2-Bの教室に足早に戻った


「一条君のあれ、なんだったんだろうね」

「さあ?勝ったのに項垂れるとかよく分からない事してるし」

 もう訳分からん。なんなんだアイツ

「夏休み前の一条君はあれだね、暑さで見せた蜃気楼だったんだね」

「今の一条を見ると、そんな気がしてきたよ」

 蜃気楼・・・まやかしか、確かに今の一条と夏ごろの一条とはまるで別人だ

 なんだか納得する自分がいた


 そして一条の事は忘れ、二人で会話に花を咲かせた

 途中、いちゃいちゃするのも良いけど

 暗くなるの早いんだからなって気遣いとからかいが飛んで来たりしていた



「・・・」

「・・・」

 皆が帰り、二人しかいない教室。お互い見つめ合うように無言で過ごしている

 そんな中、雫が静粛を破った

「皆、帰ったね」

「そうだね」


「キス、しよ?」


「いいの?」

「悠なら、いや、悠じゃなきゃやだ」

 そう言って、雫はゆっくりと顔を近づけ、お互いの唇を重ねる


 一瞬か、数秒か、はたまた数分か


 延々と続くかと思う行為も、お互いゆっくり離れて顔を見合わせる

 恥ずかしそうに、でも嬉しそうに頬をほんのり赤くさせた雫の姿が映った

「しちゃったね、キス」

 私のファーストキスだよ?と茶目っ気をだして言ってきた

 初めてを僕にしてくれた、その事が凄く嬉しい

「僕もファーストキスだよ雫」

「やった、お互い初めてを交換できたね」

 そう一面満開の花畑の様に喜ぶ雫の姿は誰にも見せたくない

 そんな独占欲を抱きながらも、冬を迎えそうになる時期だ

 もう暗くなってる。

「一緒に帰ろう。送るよ」

「ありがとう。あ、そうだ!」

 何か思いついたように、ニッシシシと、いたずらっ子のような笑みを浮かべて

 こちらを見てきた

「久しぶりに、私の家でお泊りしていかない?」

「え、あ、いいの?」

「もちろん!お母さんも喜ぶよ!」

 お礼が言いたいんだって。塞ぎ込んでたのを元気な姿に戻してくれたから

 と、雫が言っていた。

 彼女である雫のお誘いだ。断らない訳が無い

「じゃ、このまま一緒に雫の家に行こうかな」

「はーい!私の家にご案内ー♪」

 そう言って、手を繋いで帰路に着いた


 着いた時に雫の母さんからは今日はお赤飯かしらとからかわれた

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