金船真帆という金船財閥の令嬢

 普段はお調子者で破天荒だがフレンドリーで明るい雰囲気が一転

 その鋭い眼差しは圧を感じさせ、口調も固い物に変わっている。

 異端児とはなんなんだと思わされる、気品溢れる財閥の令嬢が目の前にいた。


 今の金船先輩は冷徹と言われても納得してしまう。

 それはそれとして

 かかったな一条……

 食堂で雫が激昂したあの日の呟きを思い出した。

 金船先輩はハーレムメンバーとは言い難い事をする。

 普通思い人の作品を酷評するか?

 しかし何がつまらないんだろうか。

「一番つまらない?」

「高校生にそれを見せろと言うのは酷ではある」

 だがそれでもと金船先輩、いや金船令嬢は続けていく。

 それはそれ、これはこれ

 評価を下す時は公平に見て分けられるって事なんだろうか。

「一条のはな、魂を感じないのだ。上手いだけで終わる」

「魂、ですか?」

「難しく言ったが、要は拘りとかだ。

 例えばあそこ。並々ならぬ描き込みをしてるのがあるだろう?」

 そう言って金船真帆に案内された先の絵を見る。

 男の子が描いたんだろうなと思わされる

 ちょっと胸や太ももを強調された

 男だったらそっちに目が思わずいくような絵だ。

「これ男の子が描いたんだろうな」

「…、悠はこう言うの、好み?」

「雫がいるから別に」

「……♪」

 言って欲しい事を言って貰えたからか、雫はご機嫌だ。


「東谷、なんで男が描いたと思った?」

「え?」

 突然の問に言葉が詰まった。

 上手く説明できない・・・が、言ってはなんだが

 女の子が描くとは思えないと感じたんだけど。

「一条から教えられてるから男である事は正解だ。

 ただ知らなくても男が描いたと思わせる内容っていうのが東谷に伝わった」

 確かに複雑だけど伝わった

 あーこれが拘りとかなのか?

「絵として評価するなら男が抱く女はこうあってほしいという

 欲望の塊を絵に具現化したもの、だな」

 まあ、そう言われればそんな絵な気がする。

「で、私個人としてこの中でこれが一番好きと言えた」

 それがあの台無しにされた風景画

「僕は台無しにされたと感じた」

「私はイジメられてると思ったんですけど・・・

 間違ってますか?」

「どう受け取るか受け手次第だ。お前達が思ったそれが正解だ」

 貫禄がある

 これを普段から見せてたら令嬢って敬われるのではと思った。

「で、私の感想はな、嘆きが伝わる」

 ほら、風景は綺麗に描いてるだけだが

 上から潰してるのはかなり乱暴な物になってるだろうと言われたので

 乱暴に潰してる部分をよく見る。

 確かにただ筆を走らせたというより、習字の止めからスタートしてるような跡。

 勢いよくやったのか、止めの付近に飛沫が飛んでるし一部破れてる。

 直接水をかけたであろう紙の状態の悪さ。

 上から下にかけて爪で引っ搔いたような跡もないかこれ。

「こう言うの中々無いと思うぞ」

 だから私はコレが一番好きだ。金船真帆はそう語った


「一方で一条だ。さっき言ったが魂を感じない」

 金船真帆が言うに、譲れない拘り、描きたい思い。

 何かが見え隠れするのに、それが一切ない。ただ描いただけ。

 機械で出したと言われたら納得する出来と酷評した。

「これでテーマが心の無い作品だったら優勝だな」

 そう皮肉って。


「ま、決めるのはここに来た人だから、私個人で決められないんだけどな!」

 そう言っていつもの知ってる金船先輩に戻った

 正直、金船先輩の令嬢状態だと圧があるからこの状態でいてほしい。

 普段破天荒なのは

 そういう圧を感じさせない為なのかと

 美術部の評価をした金船令嬢を見てそう思った。

「んじゃ次行くから。じゃあなお二人さん」

そう言って金船先輩は護衛を連れて次に向かった。



「・・・悠、あの風景画さ」

「うん、僕も気づいた」

「出したって事はあれで良いって事なのかな・・・」

「たぶん・・・」


 台無しになっている風景画の作品は七瀬さんが描いていた物だった


 納得いくもの描きたいから


 放課後に描いてた風景画は

 七瀬さんが描きたかったものじゃなかったって事なのか・・・?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る