体育祭

 運動の秋

 昨今の猛暑を考慮し、

 10月以降の日中でも強烈な暑さを感じない日に体育祭をしようと

 教員らで取り決められた事で、11月に近い日に体育祭は行われた


 絶対勝つぞー!おー!

 それぞれの応援団が鼓舞する

 そんな中、遊助は絶望するように頭を抱えてしゃがみ込んでいた

「東谷、骨は拾ってくれ」

「遊助、体育祭でそれは大袈裟すぎる」

「無理だ。連日の寝不足と不摂生で体調不良を狙ったのに良好だったから

 ずる休みしようとしたら母ちゃんに車を出されて無理やり登校させられた」

「ただの自業自得じゃねーか」

 コイツバカだろ

 そう思いながらそれぞれの各応援団の熱いダンスを眺める


 応援団の熱いダンスが終わった事で、競技が始まった

 まずは各チームの代表達で行う二人三脚

「行こう悠!」

「よっしゃやってやりますか!」

 そう言って雫と向かった

 二人三脚は男女ペアでも当人が良いならと許可がだされてる

 という事で同じクラスである雫と僕が代表として選出させられた


 向かってる途中、周りからは

 行けー幼馴染カップル!

 皆の嫉妬の嵐に吹き飛ばされろ!

 嘲笑うかのようにダントツトップに躍り出ろ!

 転倒してラッキースケベしろ!


 お前ら応援するのか罵倒するのかどっちかにしろ!

 なんだラッキースケベって!そんなのするか!

「え、えっとスケベなのは、皆のいないところで・・・ね?」

「雫もそれに反応しない!」

「えっへへへ。ごめん」

 そう茶目っ気をだして謝られたら何も言えないじゃないか

 が、周りの代表はそれが面白くないのか


 このペアには勝つ・・・

 見せつけやがってよ・・・

 リア充ひ孫に看取られるまで末永く爆発しろ


 なんかそんな感じの声が聞こえてきた


「よし、私がスタートの合図を出すぜ!」

 そういったのは金船先輩だった

 それ先生が、もしくは実行委員がするもんじゃないのか?

 この人実行委員じゃないはずだが

「えっと金船先輩?」

「よーう東谷ちゃん!雫ちゃんも!ご祝儀は5億円だせばいいか?」

「桁違いな金額を言われても困ります・・・」

 ホントに桁違いだよ。何に使えばいいんだよそれ

 というか雫が言ってたけど、腐る気がする。

 お金もだけど、人として

「えっと、渡されても怖くて使えないんで」

「そうそう」

「そっか・・・」

 と、断られた事にシュン・・・とする金船先輩

 あれ、断らない方が良かったか?と思っていたら

「ま、贈与税ていう税金ががかかるからそんな金額出せないんだけどな!」

「じゃあなんでそんな巨額を言ったんですか!」

 この人、からかう為に巨額の数値を言っただけかい!

 財閥の令嬢なだけにホントに可能そうにしてるのが余計厄介だわ!

「いやまあ実際、雫ちゃんを傷つけたからお詫びしたいってのも本音だ」

 ほら、食堂で私が雫ちゃんを激昂させたじゃん?って語った

 あ、意外と気にしてたのか

「あれはヒモになる宣言をした一条君が悪いので、金船先輩は悪くないです」

「そう言ってくれると嬉しいぜ・・・」

 そう言って唐突に僕と雫の肩を組んで囁くように言ってきた

「で、お前ら結婚する事に反対はしないんだな?」

「え・・・」

「あ・・・」

「かー!青春してるねー!セッティングは任せろ!」

 あーもうこの人に無茶苦茶にされる!

 雫も顔が赤くなってるし、きっと僕も顔が赤い!


「あのー始まらないんで持ち場に戻ってもらえませんかー?」


 と、黒いオーラを纏うように

 実行委員が財閥の令嬢の頭を鷲掴みするように力強く掴み、引っ張っていった

「いでででで!?抜ける!抜ける!髪の毛が抜ける!」

「抜けた本数だけ反省してください」

「私お嫁に行けなくなっちゃう!」

「行けなくなって後悔してろ」

 格代表は勇者だなアイツ・・・と呟いた


「・・・位置についてー・・・」

 さっきと打って変わってテンションだだ下がりの金船先輩がスタートの合図をした


「よーい・・・ドン!」

 パァン!

 とスタートの合図を出すように上に向けてスタートピストルの引き金を引いた

 それを合図に1年生が走り出した


「あそこ、身長差が凄い男女ペアがいるじゃん?」

「いるね」

富士本司ふじもとつかさ。ハーレムメンバーの一人だよ」

 兄妹だと言われてもおかしくない程度にはペアの男の子との身長差が凄い

 30cmは離れてるのではないだろうか?

 だが、走りを見て思った

 兄妹ではなく、男の子が富士本司の方の歩幅を合わせるよう

 思いやるように走る姿をしていた

 結果的に最下位だったが

 男の子は富士本司に走り切ったな!と言って満面の笑みを見せていた

 富士本さんの方は顔を逸らしてるが、手を後ろに組み、足をトントンさせてる

 恥ずかしいが悪くない。そんな感じの様子だ

「富士本さん、ハーレムから抜けそうだね」

「あの様子のままなら確実にね」

「うん。さて走るよ悠!」

「行こう!雫!」


 結果だけ言えば、阿吽の呼吸を見せつけてダントツ1位になった

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