ハーレムが崩壊する音

「今更だけど、呼び方どうする?」

「今まで通りで良くない?」

「ずっと下の名前を呼び捨てにして呼んでたもんね」

 ずっと下の名前で呼んでた弊害がこんな所で出るなんてと2人して笑う

 そしてこれからについて語る

 その中で決めた事は、時々はお互いが思う所を口にする事

 今回みたいにすれ違ってたら嫌だからと決めた事だ


 お互いが想い合う

 僕は幸せだ

 だが雫も幸せだと思わせたい、思ってもらいたい

 なので彼女がどう思ってるのか、ちゃんと聞く

 そしてその思いを尊重し、落としどころを探す

 そう決めた


 そう思いながら過ごした数日経ったある日、一条のいる教室の様子が変わった

 それはハーレムの様子を眺める全員の視線だ

 今までの男達からはハーレム状態の一条を羨み、怨嗟の声や睨む視線を送っていた

 それが今では、どうなるか見ものだなと好奇心に変わっていた

 女の子達からは時間切れって奴だねと呟いてるの聞こえてくる


 何があった?男達はあれだけ恨めしそうに睨んでいたのに

「雫、これ何が起きてるんだろう」

「私も分からない・・・」

 お互い顔を合わせながら疑問に思っているところ

 一条と同じ教室で勉学を励む人がこっちにやってきた

 そして一条には聞こえないように僕の肩を組んで語ってくる

「よう東谷。お前のおかげで良い物が見れそうだ」

「え、それどういうこと?」

「引っ張り出した本人だと認識しにくいのか?まあいいや聞いとけ」

 幸せ絶好調だろうしなと、何があったのか説明してくれた


 内容は、僕が雫を一条のハーレムから引き剝がして

 恋人関係になってる事がきっかけとなった事だ

 ハーレムの一員の中に、それぞれの女の子を思う男達がいた

 傷つけたく無い、惑わしたくない。幸せを思うならと何もしなかった

 が、そんな中で僕が動いた結果、雫が振り向いてくれたと認識した

 動かなかったら振り向くわけが無い

 アイツは難聴鈍感で見向きもしておらず

 それどころか思いを蔑ろにし、不満を積もらせ好意を擦り減らしてる

 ならばチャンスだ。今の内に行動しよう

 あんな奴によって不幸にさせられるくらいなら自分が幸せにする

 しない後悔よりする後悔だと覚悟を決めて猛アタックする

 それぞれの女の子を思う男達は、認識をそう改め直したんだそうだ

 ハーレムを羨み怨嗟の声や眼差しを送っていた男達は

 どれだけの女の子が剥がされるのか気になるようになり

 好奇心に変わったっていう事を伝えられた


「そんな事が・・・」

「そういう事、ネタの提供ありがとうよ」

「提供したつもりはないけどね」

「それもそうか。お前はあんな奴になるなよ?」

「分かってるよ」

 僕の返答に満足したのか、気合注入かのように背中を叩き教室に戻った

 僕は雫を大事にすると決めている

 そう思って雫の方を見ると、雫の方も僕を見ており

 顔を合わせる形になったのでお互い顔を赤くした

「きょ、教室に戻ろうか!」

「う、うん!」

 そう言ってなんだが恥ずかしく感じながら自分たちの教室に戻った


 自分たちの教室、2-Bで向かい合って座って会話に花を咲かせてる時

「ハーレムの一員になってる皆、行動してる男の子達に靡いちゃうだろうな」

 雫がそんな事を呟いたのを聞いちゃったので聞いてみようかな

「と言いますと?」

「聞いてたんだ。じゃ、言っちゃいますか。

 私が当事者だから言える事なんだけどさ、やっぱり一番になりたいのよ」

「それは協力してたから分かる」

「でも一条君、一人に絞らないじゃん?

 そんなんだったら自分を見てくれる人と思い合う方が幸せで嬉しいもん」

「だからあのハーレムは崩れると」

「そういう事」

 恋した女の子であった雫が言うのならそうなんだろうな


 僕が雫を一条のハーレムから引き剥がした事で、ハーレムの崩壊が始まった

 だが土台が安定してなかった所を、僕が行動した事でそれが早まっただけだろう

 選ばなかったのが悪い

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