誰かの為に思うもの

「お弁当、今日持ってきてない。持ってくるなって言われて」

「友梨ちゃん乱暴すぎるでしょ・・・」

 全く、無理やりセッティングさせたでしょとぼやく姿を見ながら

 僕は椅子を雫に渡す

 だがそれで気恥ずかしさが紛れたのだろう

 雫がいつもの調子に戻った

「はいお弁当。悠の為に作ってきたからさ」

「ありがとう!いただきます!」

「!・・・ふふ、私も食べよう。いただきます」

 

そう言ってお弁当の蓋を開ける

 その内容は唐揚げにウィンナー、生姜焼きとチキンステーキ

 肉、肉、肉といったものだった

 申し訳程度に卵焼きがある程度だった

「凄い肉だらけ」

「あ、ごめん・・・嫌だった?」

「ううん。僕の為に作ってくれたんだ。喜んで食べるよ」

 そう言って僕は肉だらけのお弁当を食した

 そして食べている途中に有る事に気が付いた

 これあれか、一条の好みにしてた奴だ

 そして味付けが濃い。でも確か雫は味付けが濃いのをあまり好かないはずだ

 こういった所を合わせようとしていたのに、アイツは無下にしてたのか

 腹の立つ


「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」

「お弁当ありがとうね、美味しかったよ」

「どういたしまして、えっとそれでその・・・」

 何かを求めるような仕草をする雫。

 言わなきゃ伝わらないので伝える。気になってた事もあるし

「雫に聞きたい事があるんだけど、これ雫も同じもの食べてるんだよね」

「え、うん、そうだけど、それが?」

「味付けが濃いの苦手じゃなかった?大丈夫?」

「!・・・うーん実はあまり」

 あっははは・・・と頬を指で搔きながら苦笑いしてる

 やはり少し無理してたのか

「作るの大変なんだし、雫が食べやすくて作りやすい物で良かったんだよ?」

「それは、まあ・・・悠には物足りないんじゃと思ってね」

「それで雫に無理はさせたくないかな」

ちょっと興味があるものがある

「もしわがまま言えたらだけどさ、僕は雫好みのを食べてみたいかな」

「私の?」

「うん」

「私の好みのか・・・そっかー。へへ、そっか!」

分かった、楽しみにしててね!と笑顔で応える雫は可愛いな思う


次の日、雫がお弁当を二つ持ってやってくる

僕は雫に椅子を渡す

「昨日言われた通りに私好みにしてきたよ」

そう言って雫が作ったお弁当を貰う

中身はなんだろう、楽しみだ

「前回に続き、ありがとう。いただきます」

「いいっていいってお礼なんて」

「よくない。こういうの言わないと、いつかお礼を言わなくなる」

「あ・・・うん、うん!そうだね。ありがとう。いただきます」

そういえば一条の為に作ったのをいらないってされて僕に食べて貰ってた時

ずっとごめんって言っていたのを思い出す

いつからかお礼を言われなくなって、それが当然となったのだろうか


そして今回の雫が作ったお弁当の中身を確認する

ウィンナー、卵焼き、プチトマト、茹でたブロッコリー

そしてほうれん草のおひたしと胡麻和え、醤油を絡めて炒めたもやし

昨日と打って変わって野菜がある、野菜の比率が高い


変わってるのは、トマトとブロッコリーに

ドレッシングとかマヨネーズが付いてないところだ

素材の味をそのまま味わう

卵焼き、お浸しや胡麻和え、醤油を絡めたもやしも、味付けがかなり控えめだ

人によっては味が薄いと言う人がでるかもしれない


けどこれ、いいな。僕好みだ


「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした・・・どうだった?」

「これ雫の好みなんだよね?」

「え?そうだよ?」

「凄く好みだった。味覚が似てるのかも」

その言葉でパッと花が咲いたように笑顔を浮かべる雫

そしてこれを毎日食える日々を過ごしたいなと思う自分がいた


「はい雫、これ」

「え?」

そう言ってコンビニで買ってきていたミルクココアを渡す

昨日は分からなくて出来なかったが、今日は用意した

「お弁当を作ってくれたお礼。手間かけさせてるし、これくらいしないとね」

別に良いのにと言いながらも、雫は笑顔を見せながらミルクココアを飲んでる

次は何作ろうかなーと呟いてくれてる

こういうちょっとした事でも、気持ちは変わるものだと思う

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