もしも一条じゃなく東谷が主人公だったら

「なあ、例えば一条の立場が東谷ちゃんだったらどうするつもりだ?」

 藪から棒に金船先輩に変な事を聞いてきた。

 僕が一条の立場にいたら、か

「え、あのハーレム状態で?」

「それかアイツが行動開始した4月からでも良いぜ」

 ハーレム状態で選ぶのって……いや選べるけどさ

 思わせ振りしといて違いましたーってやりたくないから答えにくいと思ったが

 4月からなら、答えられるな。余裕だね

「え、5月になる前に雫を恋人にするけど」

「もう悠ったら」

 答えに喜んで僕の胸に頬スリをしている雫。

 最近スキンシップが激しくなってきたと感じるが

 他でもない僕が受け入れてるから純粋に嬉しかったり。

「うん、分かってはいたけど面白くない答えだな」

 逆に不満気なのが金船先輩だ。

 え、誰を選ぶと思ったのか逆に聞きたいんだけど


 ってそれより

「そういえば、なんで僕は雫を恋人にって発想出なかったんだろうね」

「……言われてみれば私も」

 雫は頬スリを止めて僕と同意見って反応をした。

 やっぱり変だよね

「それに関してだが……足立から聞いた限りだとこうなるみたいだ」

 ただの予想だがと金船先輩は答えた。

 一条にとってこの世界はゲーム

 一条のお膳立ての為に全員が清らかな状態じゃないと始められないから

 僕らと雫達は恋人関係に必要な感情を抑えつけられていたのではないか

 っと言うものだ。

 そうなると産まれた瞬間アイツに妨害され続けてた事になるんだけど。


 だとしたらなんか変だな

「待ってください金船先輩。じゃあなんで僕は雫を取り返せたのですか」

「取り返してくれたのとても嬉しいけど……変だよね」

「それ足立が別案としての面白い答えが飛んできた

 お前ライバルポジションじゃないか?」

「ライバル?」

 一条が誰か一人を選んだとしたら、確かに僕はライバルポジションだ。

 大海君たちも一条からしたらライバルポジションって事か。

「足立が言うにはな

 ライバルイベントを完遂するとヒロインはライバルと結ばれるゲームが存在する」

 そしてここからは私の推測だと金船先輩は語った。

 僕達の関係をゲームに例えるとライバルイベント完遂直前だったのを

 一条に抑えつけられ、完遂出来なくされた。

 だがハーレムエンド後の世界で蔑ろにした結果

 好感度が下がった一瞬の隙を突いてライバルイベントを進めることが出来

 金船先輩が雫を激怒させた後の僕の行動が

 ライバルイベント完遂に繋げられたのでは無いかと。

 完遂してしまえばいくらチートを持っててもイベントは発生する。

 そこからハーレムエンドが崩れたとの事だ。

「なるほどねー」

「逆に私、悠がいなかったらいつまでも一条のとこにいたのね……」

 と震えるように語るので抱きしめて落ち着かせる

「発想を変えようよ

 そんな不可思議な力を使ってもなお僕らの仲を引き裂けなかったんだ」

「悠……そうね、そうよね!」

 雫は喜びのあまりに僕の頬と雫の頬で擦り合わせる

 雫は可愛いなぁ


「……誰かブラックコーヒーくれ……」



 ーーーーーーー


「てことがあった」

「自爆特攻は勧めませんよ金船先輩……

 そもそもアイツが主人公じゃ恋愛ゲームが始まりません」

 足立は東谷を主人公の魂じゃないという。

 だが東谷が動いたから崩せたし

 恋愛ゲームの主人公のような立ち回りと思えるが……

「アイツの場合別の主人公になります」

「というと」

「雨宮雫という幼馴染との激甘純愛いちゃラブエッチのエロゲーが始まります」


「げき…、いちゃ……え?」

 私は思考が一瞬止まった。

 最後のエロゲーは聞き取ったから

 内容的にエッチな事をするものだとは把握してる。

 流石にそれ知らないはしない。単語としては知ってる。

 だが……エロゲー?東谷が?

「そ、そうなのか?」

「はい、風紀を乱す勢いでする可能性あります」

 その後足立に熱弁されたが、その、コイツの饒舌っぷりに圧倒された

 よく分からないが、分かることは東谷が主人公じゃなくて良かったってところだ。

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