協力者

 何も僕一人だけが雫の恋愛に協力していた訳ではない

 相葉友梨

 雨宮雫の友達だ。僕と同じように雫の恋愛に協力してくれていた女の子だ

 もっとも一条のハーレム宣言のような告白を最後に手伝うのを止め

「あんな奴とくっついた所で不幸になるだけだって」

 と、逆に一条を追いかけるのを止めるように説得していた

 僕は雫が追いかけたいのならと思い協力してると語った時は

 アンタは雫ちゃんに甘いのよ!って怒ってた

 今一人で考え事をしても解決しないと思い

 放課後に相葉友梨がいる2-Cの教室に向かった

 何言われるかなーとちょっと負い目に感じながら


「相葉さん」

「何の用?」

「いきなり手厳しいね・・・」

 相葉友梨の元へ行くやいなや、キツイ口調でそう言ってきた

 ただそうなってるのも理由があるので嫌な思いはしない

「そりゃそうよ!雫ちゃんが塞ぎ込んで弱った姿になってるんだから!」

「その事で相談したくて」

「聞いてあげるわ」

 そう言って相葉は僕に椅子を渡してくれた

 相葉友梨は基本的に優しい子だが、友達思いが過ぎて口調がきつくなる事がある

 僕が来たって事は雫関係の事だと思ったのだろう

 だから口調がきつくなったが、優しい子なのは間違いない

 現にこうやって相談を持ち掛けたら、椅子を出してくれて話を聞いてくれる

 と言う事で相葉友梨に相談した


 どうやったら雫が元気な姿に戻るか


 相葉はそんなの簡単よ言いながらこう続けてきた。でもそれは無理だ

「アンタが雫ちゃんを引っかけるのよ」

「それはダメだよ。雫を裏切りたくないから」

「裏切るってアンタに限ってそれは無いと思うのだけれど?詳細を言いなさい」

「えーでもちょっと恥ずかしいというか」

「い・い・か・ら!」

「は、はい!」

 と言う事で僕は裏切りたくない理由を語った。と言っても至ってシンプル

「なんていうか、さ。今言い寄ったら弱るのを待ってたって思われそうで」

「ん?え?・・・まあ状態的にそうよね。

 でもそれだけじゃ理由が弱いわ。他にもあるのなら言いなさい」

 と言う事で根掘り葉掘り語らされた


 1年生の時に告白してくる男が後を絶たない事

 それで雫がげんなりしていたのを知ってたし

 なんであんなに言い寄ってくるのか分からないと

 愚痴ってたのを聞き役に徹してた事

 2年生になり、夏休みに入る前に雫から一条の事が好きになった

 自分から聞くのは恥ずかしい

 相葉にも手伝って貰ってるけど、男相手だったら言える内容もあると思い

 僕ならその内容を曲げずに教えてくれると言ってくれた事

 そしてハーレム宣言後も協力を頼まれた事

 その時に思ったことは全部伝えた


「それにほら、雫が告白する前の一条って即断即決で必ず成功させてたし

 勉強も運動もできてたじゃん?」

「ええ、だから私も一条ならって思って協力したのよ」

 その後のハーレム宣言でアイツはダメだと思い直したけれどもと続けた

 僕としてはあれだけの女の子に言い寄られながら

 全員好きだって発言はどうかと思う、が

 その時の逃げとして思うのなら分からなくもない

 時間が経った今だからこの発想になれるが

 一条は時間をくれって言うべきだったと思う


「個人的にあれだけ言い寄られたら流石に悩むかと思って。

 その中で雫が出し抜けるのなら、すぐに雫を選ぶと思ったんだよ」

「でも現実は雫ちゃんが塞ぎ込む結果になったと」

「う、だからどうやったら僕の好きな雫の姿に戻るのか聞きに来たのに」

 えっと驚いた様子をしてる相葉。どうしたのか

「アンタ雫ちゃんの事好きなの?」

「何言ってんの。好きじゃ無かったら協力なんてするわけ無いでしょ」

「え?」

 相葉は動揺を隠せないと言った様子の反応だ

 その後うーん・・・と額に手を置き、瞼を閉じながらうねるように考え事をしてる

「ちょっと確認させて。アンタは雫の事が好きなのよね」

「そりゃ勿論」

「異性として見る事はできる?」

「え、うん見る事はできるよ?」

「・・・じゃあ何で一条と結ばれるように行動をしてるの」

「雫が一条の彼女になりたいって言ったから」

 だから協力してる訳だしと答えたら、相葉はこめかみを抑える様になった。

 頭痛でもするのだろうか?生憎、頭痛薬は持ってないんだけども

 それでも質問が続けられる

「恋愛の行きつく先にエッチな事もあるけど

 それ雫がアンタ以外の男がするっての想像した?」

「想像したけど、いつかする事だし雫なら信用したからしたって思えるけど」

「・・・万が一、それで傷ついた雫がアンタの元へ来たらどうするの」

「慰めて気が済むまで八つ当たりの的になってみるかな」

「じゃあ気が済みました。アンタどうするつもり?」

「次はもっと良い恋愛ができるよと送り出すかな」


「・・・コイツまさか」


 問答中、何かに気が付いた反応をした後

 相葉は頭を抱えるように机に突っ伏してる

 何か深刻な事でもあるのだろうか

「ねえ、もし、もしだけど・・・」

 突っ伏したまま、相葉が口にするかどうか迷うようにしながら言葉にしていく


「鞍替えするように雫ちゃんが貴方に告白したら受け入れる?」


 鞍替え先が僕だったら?そりゃ嬉しいけども、なんでだ?

 ちゃんと確認しよう

「?雫が?」

「もし、よ。軽い女と軽蔑する?」

「全然?一条の奴、雫に見限られちゃったかって思うかな」

 一途に頑張ってたのを知ってる

 だけど一条は思いに応えない

 雫が作ったお弁当を蔑ろにする

 いつまで経っても答えをださない

 見限るのには十分なくらいの行動と時間は経ってるでしょ

 雫が一条との関係を切りたいのなら、切ってもいい

 そう伝えると相葉はガバッと顔を上げ、迫真な表情で顔を近づけてきた


「最終確認!アンタ、雫ちゃんとエッチな事できる!?」

「えぇ!?」

 何聞いてきてるんだ!?

 雫が僕とか!?言われた事でちょっと邪な考えをした


 悠、私のここ・・・


 そう耽っていると相葉が満足したような口調で言ってきた

「鼻の下を伸ばせるって事は出来るって事ね!」

「!?え、あ、はい。できます・・・」

 うわ、かなり恥ずかしい姿をしてたのを見られてた・・・

 穴があったら入って埋まりたい

 そんな思いをしてる状態の僕とは裏腹に

 相葉はこれなら!とさっきと違って意気揚々と立ち上がり

「雫ちゃんの反応によるけど、良い方法があるかもしれない!

 後日、どんな雫が来ても受け入れなさい!絶対よ!」

 と、僕に指差ししながら相葉がそう言った


 雫の良い所も悪い所も知ってるつもりだ

 受け入れない訳が無い

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