ハーレムは全員が納得してないと成立しない
「ねえ悠」
「どうしたの雫?」
紅葉が深みを増し、体育祭やら文化祭と言った目白押しのイベントがある秋頃
2-Bの教室で一人、昼休みでお弁当タイムを終えてどう過ごそうかなと考えてる所に、同級生で幼馴染である雫がやってきた
どこか申し訳なさそうにしてお弁当を二つ持ちながら
「その、まだご飯食べられる?」
「食べられるけど・・・また無下にされたの?」
「うん・・・」
あの後全員が思いの丈を告白した
誰が選ばれるのか?自分を選んで欲しい。そういう願いを込めて
だが一条が返した言葉は、皆の事が好きだ!という優柔不断極まりない物だった
最初は雫も一条の近くにいた
だが不満は積もる物。やはり一人を大切にしてほしいと雫が語った
雫からは恋のライバルが多くて、その人達から出し抜く為にも
一条の彼女になる手助けをしてほしいと頼まれたので、引き続き僕は協力した
ライバル達を出し抜き、二人きりになれる状況
好みのものをリサーチするために一条に接近して会話したりと
可能な範囲で手伝っていた
だがそれも途中で協力するのを嫌になり止めた
嫉妬心からでは無い。不誠実な態度を取り続ける一条を見限ったからだ。
それはあるお昼休みのお弁当タイムで起きた一幕
食堂で周りの女の子たちと一条が食事中に僕が焚き付けた時だ
「一条、いい加減誰かを選んでくれ」
今思えば食堂で公開告白しろって言ってるようなもんだ。
言えるものも言える訳が無い
だけど、それが分からなくなる程度には僕も焦燥感に駆られていたのかもしれない
食堂にいた人達はなんだあの勇者と驚く
だが誰を選ぶのか自分も気になるといった好奇心と
ハーレムを面白くない
妬ましいと睨むように嫉妬心を見せながら、こちらを注目していた。
一条の周りの女の子達はちょっと・・・!と顔を赤くしながらも
自分が選ばれれば良いなとまんざらでもない表情をしているのを見逃さなかった。
その中には雫の姿もあった。
「選ぶって何をだよ」
「一条が誰を恋人にするのか」
「選ぶって皆の事が好きだ。全員好きなら選ぶ必要ないだろ」
「はぁ・・・一条の周りにいる女の子
自分を選んで恋人関係にって望んでるんだぞ」
「・・・ん。あ、悪い。聞こえなかった。なんて言った?」
(分かってはいたけど、ウソだろコイツ)
一条の奴は恋人関係の話になると難聴鈍感って言うには無理があるもので返答する
まるで応えたくないかのように難聴鈍感をしてはぐらかす。
周りの女の子も期待した回答じゃなかったことに溜息ついてる
一条と関わりが無い人は養豚場の豚を見るかのような侮蔑の視線を送りながら
いつか見限られるぞアイツ、何であんなのがモテるんだと呟いていた。
個人的にもっと大事な事を言わないと
「というか雨宮のお弁当を食わないって何?前日に持ってくるの伝えてた筈だけど」
「唐突に食堂のうどんが食いたいって思ったんだから仕方ねえじゃん」
雫は行き場を失った弁当を眺めてる
雫がコイツと恋人関係になっても幸せになれるのか怪しく思うようになった
が、それでも雫の為と自分を誤魔化し続けていた。
だが、雫の思いを裏切るような事を言われた事で誤魔化す感情が白旗を上げた
「そんなに食べてほしいと思うのならお前が食べろよ」
僕は雫が一条の為に作ったお弁当を無下にする発言をした一条の事が嫌いになった
一条は周りにいる女の子を誰か一人を選ぼうとしない
皆良い子だから、僕だって一条の立場になれば迷う自信があるが、選ぶ覚悟はする
じゃないと勇気を出して告白してくれた女の子達に不誠実だからだ。
だが一条は選ばずにいる。それは悪手だと僕は思う
全員好きというハーレムは、全員が納得してたら成り立つものだ。
雫の様に納得してない女の子がいる時点で成立してないし
不満に思うようになる。
その不満が積もり積もっていき、好意を押し潰し、擦り減らしていく
減り切った先は無関心、嫌悪と言っていいだろう
「……私、食べ終わったし先に戻るね」
僕は涙を堪えながら自分の教室に帰る雫を追いかけた
それ以降僕は一条とは関わらなくなったし、雫は一条と関わる頻度が減った
そんな事があったが
それでも雫は振り向いてもらおうと頑張ってお弁当を作ってる
そんな事があったのに?と思うかもしれない
が、ダメなら自分が食べるから恐れず行ってきてと雫に伝える
逃げ先にしてあるから雫はめげずに頑張れていると思ってる
「悠、毎回ごめんね。食べられそう?」
「大丈夫、無駄にしないよ」
「ありがとう・・・」
雫は一生懸命の努力家だ
不慣れだったのに一条の為にお弁当を作ったり
一条の好きな物を好きになるように頑張っていた
失敗した事もあった。だがそれでへこたれず、次こそと行動をしていた
内面だけでもこれだけ良いのに、外見も良いと来た
くせ毛の無いストレートなセミロングで艶のある濡れ羽色の黒髪
丁寧に手入れされた整った顔立ち
理想的なスレンダーを維持した体型
そして何より、喜んだ時は満開の花が咲いた様に笑顔を見せる
それが僕の知る雨宮雫だ
だがそれも鳴りを潜め、今にも枯れそうな弱弱しい笑顔を作るようになった。
そしてあれだけあった自信いっぱいな表情も今は無く、すぐに俯いてしまう
僕はそんな表情をする雫の姿が嫌で焦ってる
どうやったら雫が満開の花のような笑顔に戻るのかと考えていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます