財閥の異端児が出す問題

 期末テストの勉強期間

「よーし一条君、覚悟決めてよ?」

 教室を通り過ぎようとした時、そんな声が聞こえたので雫と一緒に足を止めて

 声が聞こえた2-Aの教室を覗く。

「ここで問題!」

 そう言ってハーレム要員の一人

 金船先輩が一条の方に振り向き

 ある一文字の漢字が書かれたデカい紙を見せた。

 どこから出したんだとは言わない。

 一条はと言うと、問題を出してくる金船先輩をただ見てるだけだ。

「『鍬』コレなんて読む?」

 金船先輩がそう言った

 クワじゃないのか?教室にいた周りの皆も同じ回答だった。

 それは一条も例外では無かった

「・・・クワ」

「!?・・・意気地なし。バーカ」

「え・・・あ」

 一条は金船先輩に突拍子もなく罵倒されていた

 というかアレ、クワって読まないのか?


「雫、あれクワって読まないのか?」

「今クワで変換してみたけど、うん、鍬って出るね」

「え、じゃあ金船先輩はなんで正解してるのにダメって言ったんだ・・・?」

 雫は携帯機でクワを変換した先を確認しながらダメって言った事に困惑している

 そういえば一条に恋した女の子と違って

 一条を他の女の子に奪われたくないって感じで行動してる姿を見てない気がする。

 今回は接触してる姿を見てるが、私が私がって感じがしない

 外堀を埋めたってのは嘘なのか?

 一条の教室にいた人たちも僕らと同じ様に検索しており

 合ってるのにダメ扱いにした事に困惑していた。


 自分たちの教室に戻る途中

 誰かに後ろから急襲された

「よう東谷ちゃーん」

「え、金船先輩!?」

「金船先輩、悠から離れてくれませんか?」

 突然、金船先輩が僕の後ろから抱き着いてきた。

 雫はそれを面白く思わず、先輩だから強く言えず

 でも睨みながら僕から離れるのを促した。

 けど金船先輩は気にしないかのように語り続ける

「いやーやっぱり君ら弄るの楽しいねーよしよししてあげよう」

「ちょ、ちょっと!?」

 なんなんだこの人!?行動が読めない!怖い!でも言う!

「止めてください。雫以外にそれをされたくないです」

「お、雫ちゃんだったらいいのか」

 言霊を取ったと言わんがばかりに金船先輩が口を下弦の月にして怪しく笑った

「では雫ちゃんの元に戻りたいのなら、ある事を答えてもらうとしようかねぇ?」

 金船先輩は僕から離れて、さっき一条に見せた『鍬』と書かれた紙を渡してきた


「これを雫ちゃんに答えてもらうとするかねぇ?」

 にやにやしながら金船先輩がそう言ってるが、困ったな

 これクワって答えたらダメって返した奴じゃん。

 なんて答えるのが正解なんだよ

 雫も困ってる。クワって答えられないからだ

「ん?困ってるみたいだな。雫ちゃん耳貸してー」

 わざとらしく金船先輩は言う。

 この人なんで僕らがクワって言えないのを知ってるんだ

 どのタイミングでこっちを認識してたんだ。


 答えられなくて困っていた雫は金船先輩に素直に耳を貸している

 金船先輩は雫の耳元でぼそぼそと僕に聞こえないように語って。

 何を言われたのか雫は顔を赤くしつつ、なるほどそれでと納得した様子だ。

 え、何を言われたんだ?

「悠、答えるけど廊下だと恥ずかしいから耳貸して」

 金船先輩と同じようにそう言ってきた

 恥ずかしいってどういうことだ?そう思いながら雫に耳を貸して答えを聞いた。

「それ、ね、『すき』って言うの」

 僕は顔を真っ赤にした。

 金船先輩はその反応に満足したのか

 かー青春してるねー!と言ってスキップしながら去って行った。


 金船先輩は『すき』って一条に言ってほしかったのだろうか

 そんな事を思いながらも、期末テストが始まった。


 大海君は、この期末テストで勝負を決めるのだろうか

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