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「忘れ物」


寮の食堂のいつもの場所に、座っていた彼女を見つけ、早々に落としていったハンドタオルを差し出すが、今度はヒトの顔すら見ず、うつむいたまま


「あっ、すみません」


「何?それだけ?」


椿としたら、感じの悪い女に関わらなきゃ良いのに、あのユイなのか、確かめたい一心で


「ねえ?」


目の前に立たれたままのユイからしたら、他からの視線も気になるはずだ。


「あんた、ヒトの話聞いてんの?」


椿がイラッとしている事は既にわかっているユイだが、頑なに返事も顔も見ない。


既にたベ終えている食器を片付ける事も出来ずに、ただ一点を見つめていた。

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