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しびれを切らした椿は、ユイがしている眼鏡を取り上げると同時に、至近距離で顔をまじまじと見て


「やっばり、お前か!無視してんじゃねーよ」


「ちょっと!返しなさいよ!」


子供の頃二人は、取っ組み合いの喧嘩をよくしたものだが、あの頃の威勢はまだ何処かに隠れてはいる。


「なんだよ、気がついてたのか?」


「はぁ?」


露骨に嫌な顔をする所は昔のままだ。


「なんでこんなのしんての?」


ユイ眼鏡をかける真似をしながら、度の入っていない眼鏡を角度を変えて見ている。


「別にあんたには関係ないでしょ」


数分前まで大人しかった、いや、暗い感じの子が今はけして綺麗な言葉とは言えない話し方で目の前の男に食らいついているのだから…


周りの目など気にする様子もない。

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