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知らないと言うのは都合が良い言い訳だと後で思った椿だが、この時の椿は言い訳でも何でもない。

ただ、視界には確実に入る距離に居るのに、一向に椿に気が付く様子も素振りもないのだから…

どんだけ、見えてないんだ?

そう、思わざるえなかったが、彼女が知らない存ぜぬな訳がなかった。

藤崎椿。

彼の名前を新入生名簿でチェック済みである。

彼にとって特別ではなかったかも知れない女の子にとっては彼は特別だったのだから…

浅見ユイ。

小学校3年生で東京に越してきてから、長くて2年同じ場所に居られれば良かった。父の仕事の関係で、短い時には半年で引っ越しが続いた。

今両親は静岡に居る。学校も転々とし、友達と呼べる人は椿同様居なかった。

まともに部活動すら出来なかった中学校生活が一番辛かった。

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