第71話  手が付けられない 

ユキヒロが「いい加減起きなさい」と声を掛けたが返事が無い。

カズキが「へ?何だよ。うるさいな」と勇ましい声が聞こえた。

ユキヒロが「この携帯も没収だ」とカズキの携帯を取り上げた。

カズキが「何で携帯を取り上げるのさ」とユキヒロを見て睨み返した。

外からブンブンブンと言ううるさいくらいのバイクの音が町中に響き渡っているのは、カズキの友達だった。

カズキが「悔しくて、父さんに携帯を取り上げられたし、どうして僕の気持ちを何も分かってくれないのさ」とバイクの友達に問いただした。

その友達は「父ちゃんウザイな。消えちまえば良いのに」と皆で笑い合って居た。

ユキヒロが「カズキ」と名前を呼んでも、小さい頃とは違う威圧感が漂って居た。

カズキは友達と花火をして、そこら辺で花火を捨てる。

カズキは「そんなの当り前なのに、何処かで何かが引っかかる」と言うそんな想いを抱いていた。

カズキは小さい頃に母親のミミアを忘れられなくて何度も一人名前を呼んでいた。

他の男子からは「お前の母ちゃん居ないんだってな?父ちゃんに振られたのか?それとも亡くなったのか?どっちであれお前は疫病神だ」とののしられ笑われた。

カズキは昔の事を思い出し、涙が止まらなくなっていた。

友達から「おい、カズキ?何泣いている。男がかっこ悪いだろう」と吐き捨てるように言った。

カズキが「あー、何でも無い。ごめんな」と涙目で友達を見た。

その日、授業参観日の日なのに「お父さんが居ない。あれほど来てって言ったのに、何で来ないの?」と後ろを睨むようにして見ていた時も在った。

他の人から「お前の家族、お前が嫌いなのか?親に見捨てられたのか?」と言う嫌がらせの言葉が飛び交って居た。

極めつけは「お前なんか学校に来るな」と机の上に書かれてあったのを見て、涙が思わず零れた。

カズキは暗い過去を背負いながら、段々と荒れて行った。

友達から「おい、カズキ聞いているのかよ」と注意されて、友達の話は上の空だった。

友達が「俺達、もう雨が降って来るから帰るわ」とカズキに手を振って帰って行った。

カズキはあれから何も話そうとせず、食事もろくに摂ろうとしなかった。

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