第16話  探し物

サナギが「あの、こちらでこういう物を探しています。見つけたら教えて頂けますか?」と指輪の写真の入ったチラシを配った。

一里離れた、密集した山々に自宅が軒を連ねていた。

サナギは夕暮れの中、薄暗い山のふもとにも足を踏み入れた。

だが、思い出の指輪は見つからない。

サナギが「ここら辺で落ちて居るとカナエさんから聞いたんだけどな。」と呆気に取られていると、農業の機械を動かすおじさんが「そんな所にある筈が無かろうが、違う処を探せ」とサナギに声を掛けた。

手も泥まみれだったが、その体を動かして、今にも倒れそうなサナギを叔父さん達が身体で支えた。

叔父さん達が「大丈夫かい?俺達も探してあげるから、そこで座って居ろ」とサナギを畑からヒョイと鍛えられた身体で持ち上げた。

その後、サナギはペットボトルのお茶を出して飲み、休憩をして居た。

そのとき一人の叔父さんが「此処が光っているみたいだけど、これじゃないのか?」と一人が手を止めて見ていた。

そのあと、畑から出て光っているものを取り出し、泥を水で洗い流した。

その後、シルバーの色をしたリングが、姿を現していた。

サナギが写真のリングと比較すると「これです。わざわざ、懐中電灯をつけて皆さんで捜索して頂き助かりました。ありがとうございます」と丁寧にお辞儀をして居た。

叔父さん達が「良いって事よ。また何か有ったら言ってくれ」と優しい気遣いの言葉をくれた。

サナギはご依頼主さんのカナエに電話をかけて「あの先ほどお望みでした、指輪の方が見つかりまして、もし良ければ此方に指輪を取りに来て頂けませんか?」と頼んだ。

カナエは「ありがとうございます。少し時間がかかるかも知れませんが、そちらで見つかった指輪を取りに行きます」と安堵した声が聞こえて来た。

サナギは指輪を磨いてカナエに「これ指輪です。受け取って貰えませんか?」と指輪を手渡した。

カナエは「サナギさん。本当にありがとうございます。夫との大切な指輪が見つかり、安心しました」と嬉しそうに声を掛けた。

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