第十五章

 無事に里親として認められた。

 「クロご飯だよ!」

 「わんわん」

 隣の市ではドッグランもあるし最近の道の駅ではペット同伴でも入れる。とは言っても食品売り場は衛生な面で入れない場所は多い。もちろん盲導犬は入れる。盲導犬は視覚障害者、特に全盲の人や弱視の人にとっては完全に目の役割をしているし、日常生活で安全に生きられるように訓練されている。例えば人が赤信号で「ゴー」と命令しても信号が赤なら絶対に進まないし、そう訓練されている。例えば沸騰したお湯がある時、この場合は聴覚障害者の人になるけどお湯が湧いていると教えたりする。聴覚障害者って盲導犬とは別だと思うけど、ごめんよく知らなくって多分名称か何かあるとは思うけど出てこなかった。そういう人と生活をペットよりも重要な子だとしたら食品売り場にも入れるけどクロは家族ではあってもペットだから入れない。まだ狂犬病予防もしていないから、予約はしているけど、その予約前に外に出すのにはリスクあるからまだ室内での運動にとどまっている。地方の家は広いとは言ってもまだ広さには限界がある。だからなるべく早く予防接種は受けたい。

 クロはご飯を勢い良く食べている。

 ふやかしたドッグフード。まだまだ子犬だけど、そろそろ普通に食べてもいい頃、だんだんと慣らしていかないと人と同じで成長にも悪くなってしまう。

 ちなみに私は赤ちゃんの頃、最初に食べたのはお寿司だったらしいというのは、祖母から聞いた。まだ乳歯も生えてない頃。ミルクを飲ませようとしても嫌がった私に手を焼いたらしいが、偶然目の前にあったお寿司を美味しそうに食べていたそうだ。当時は驚きよりも、ようやく食べてくれた事への安堵でそれどころではそのせいで太ってしまい、過去の赤ちゃんの頃の写真はあまり見たくないのが本音。

 対して兄の方は可愛かった。

 微かに茶髪な髪に近所ではよちよち散歩するたびに可愛いと言われていたらしい。同じ遺伝子なのに何だこの差はと思った。

 「クロ長くなったね」

 お風呂上がりの秋穂が髪を乾かしながら言う。

 「うん、大きくなった」

 「最初は子犬だったのに、もうすぐ大人なんだね」

 「でも、まだ柔らかいご飯ばっかり食べるよ」

 「もう少ししたらすぐに硬いもの食べるよ。犬の成長は早いんだから」

 「そうだね、あっという間だよね」

 実際、クロの成長は早かった。

 里親に認められて一年立たぬうちにクロは大人になった。

 ピント背筋を伸ばして立っているように見えるけど尻尾はこれから散歩に行く楽しさを隠しきれずに振っている。その凛々しそうにしているくせに芝っぽさの、何処か抜けている賢さが愛おしくって、今日もドッグランではしゃぐクロの姿を見ながら毎週日曜日のデートをしている。

 離れたベンチで秋穂と座りながら、他の犬と一緒に駆け回るクロを見ながら子どもを授かることの出来ない私達は手を繋いだ。

 本当に何度も考えた。子どもが欲しいのは今も思っているけど、それは出来ない。血の繋がってない子を愛せる自信がどうしてもなかったし、中にはその覚悟で愛して家族になっている人も居るけど、私はどうしてもその覚悟がなかった。秋穂はその覚悟決めることは出来たかもしれないけど、私は子供だから出来ない。だから本当にこのままでいい。養子は要らないというのは誤解があるけど、養子を迎えても自信を持ってその子を愛せるかは微妙だった。心の何処かで自分の子じゃないという感情は持つかもしれない。そうなってはその子にとっても不幸だ。だったら私はクロだけでいい。

 人と犬、種族の違いだったら多少の違いなら許せる。こういうの残酷な選択なのかな。

 ペットを家族として愛する覚悟と同じ人としての種を愛する覚悟って何が違うのかな。

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義理の姉と暮らす。 ✥日曜日更新 @wkuht

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