断章

 「どうだった?」

 夢の中でいつも会う変な兄ちゃんが聞いた。

 「別に普通だったぜ。変な姉ちゃんだったけどな」

 「変なのに普通なのかよ」

 その兄ちゃんは苦笑した。

 「普通って言葉が本来は変なんだよ。多数決程度で決まる言葉なんかに意味なんて無い。結局はその次代に合わせた価値観だ」

 「お前本当に六歳か?」

 「あんたの精神年齢に引っ張られたんだろ? 俺はあんたの生まれ変わりだから」

 俺の言葉に祐樹は驚いていた。

 「気づいていたのか」

 「ああ、夢んなかで知らない街とか出てたからな。会ったことのない人の夢だったし、あれが前世のあんたの記憶なのか、その前の前世なのか見てる側は区別つかないけど、多分そうなんだろ」

 「夢の全部がそうじゃない。お前の記憶と経験がそうさせる時もある」

 「まぁな。俺もスピリチャルな事本気で信じちゃいないさ」

 「じゃあ、俺も君の夢だけの存在だな」

 「ああ、だからあんたと会っても別に俺は俺だぜ。でも、まぁ、あんたが気になってそうだから会っただけだぜ」

 「起きたらそういった思いすらも忘れるくせに、よく言う」

 「はっ! 結局、このなかでしか本当の魂の会話できないみたいだし、身体の方の心は魂側の精神年齢とは結局は違うさ」

 「心と魂の年齢は違うか。面白いな」

 「だろ? あ、そろそろ身体が起きる時間だし、行くわ」

 「あぁ、またな」

 「あんまし俺に会いに来んなよ。成仏しろよ」

 「いや、してんだよ。俺はお前の魂の中にある記憶だ。だからお前が目覚めたら俺と会った記憶は忘れる。だが、忘れても魂は忘れない。魂は全部記憶するんだ。それでも、お前はお前だ。お前の人生を生きろ」

 「あぁ……。じゃあ、またな」

 「あぁ。また」

 「」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る